いまだ「接種ゼロ」は2国、北朝鮮は国際支援を拒否 「変異株の震源地」になる懸念も

故金日成氏生誕110年を祝うダンスパーティ(4月15日)|Cha Song Ho / AP Photo

◆副作用を警戒か
 ワシントン・ポスト紙によると、米シンクタンクの戦略国際問題研究所は、北朝鮮が副作用を懸念しているのではないかと考えているようだ。ファイザー製などmRNAワクチンのオファーがあるまでは、寄付を受け入れない可能性がある。

 政治判断も影響した模様だ。韓国・慶南大学校のリム・ユーチュル教授はABCニュースに対し、「北朝鮮がアメリカ製ワクチンの助けを借りて医療上の危機を逃れたという筋書きは、金正恩政権がアメリカに批判的な立場をとっていることを考えれば、政権にとって正当化が難しくなることだろう」と指摘する。このほか現実的な問題として、数百万回レベルの寄贈では実際の効果が薄いためではないかとの観測も出ている。

◆北朝鮮で変異種が発生する可能性
 ワクチン未接種の北朝鮮で、変異株が発生するリスクが指摘されている。戦略国際問題研究所が設けた専門委員会は報告書を通じ、ワクチン接種がまったく行われていない同地においては、新型コロナウイルスに対する国民の免疫が低く、「新たな変異株の震源地」となる可能性があると警告した。ワシントン・ポスト紙が報じた。

 同紙は過去のオピニオン記事(3月23日)のなかでもこの問題を取り上げ、パンデミックを悪化させる危険性があると指摘している。免疫力が低い北朝鮮国内での流行により、「コロナウイルスが進化し、ワクチンや過去の感染による免疫を回避しやすくなる可能性を高める」恐れがあると記事は述べている。北朝鮮がおそらく望んでいるように、mRNAワクチンを人口の80%に行き渡るよう大量に寄贈すべきだとの議論があるようだ。

 ただしABCニュースは、「北朝鮮の交渉への姿勢も問題の原因となっている」と論じる。要求を明かさずに複数の支援の枠組みに競争させ、最も都合の良いオファーに乗る手口が繰り返されてきた。ワクチンの数が揃えば解決に向かうとも限らないのが実情だ。

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Text by 青葉やまと