試されるオランダ王室:パンデミックが深めた国民との溝

ウィレム・アレクサンダー国王夫妻(2019年)|Ronald Wilfred Jansen / Shutterstock.com

◆ロイヤルファミリー手当を辞退したアマリア王女
 とはいえ、今年4月27日のキングス・デーに国王がテレビで流したスピーチは、国民に寄り添う内容で肯定的に捉えられ、支持率も57%まで回復した。(同上)

 加えて、6月には、国王夫妻の長女であり次期女王のアマリア王女が、12月の18歳の誕生日を前に、成人したロイヤルファミリーに与えられることになっている年間160万ユーロ(約2億円)の手当を、学生の間は辞退すると発表した。その理由は、国民の学生たちが困難な時期を過ごしているなか、まだそれに見合うだけの仕事をこなしていないのに手当を受け取るのには抵抗があるというものだった。このアマリア王女の決意は、おおむね好意的に受け止められた。(マダム・フィガロ誌、6/16)

◆フィジカル・ディスタンスが守れない国王
 しかしその一方で、6月17日にアムステルダムで行われたサッカー欧州選手権のオランダ対オーストリア戦の激励に訪れた国王は、またもや同国の制限策を無視した形で、フィジカル・ディスタンスをとらずに住民らと握手をかわし、批判の的となった。(シュッド・ウェスト紙、6/18)

 また、6月には手当てを辞退するという決意が称賛されたアマリア王女は、12月7日の18歳の誕生日に21人の客を招いてパーティを催したが、同時期、同国では「招待客は最大4名まで」という制限策を施行中で、いささか国民の神経を逆なでするニュースとなった。招待客はみなワクチン接種を済ませ、感染テストを受け、会場は庭園でフィジカル・ディスタンスも取られていたため、王室はパーティ開催は問題なしと考えたようだが、1週間後の12月15日、国王は「(パーティ開催は)良い考えではなかった」と再び反省の念を表明せざるを得ない状況となった。(ル・フィガロ紙、12/15)

 パンデミックという特殊な状況下で、ロイヤルファミリーがどこまで庶民に寄り添えるか試されている。

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Text by 冠ゆき