留学先を中国から台湾へ、米ハーバード大の語学プログラム 米中対立の余波か

ハーバード大学のローレンス・バカウ学長(左)と習近平国家主席(右)(2019年3月20日)|Andrea Verdelli / Pool Photo via AP

◆パンデミックが原因、変更計画は以前から
 BLCUはこの件に関してコメントを出していないが、そもそもハーバード大学のプログラムは、パンデミックのため昨年から一時停止となっていると関係者は指摘している。中国は昨年3月以来、ほとんどの海外からの旅行者に国境を閉ざしており、外国人学生へのビザ発給も停止している。規制が緩和される兆候は現在のところなく、ハーバード大学でなくても、語学研修で外国人学生が北京に来ることはありそうもないと関係者は述べている。(SCMP)

 ハーバード大学自体も、変更は運営および利便上のものだとし、行先を台湾に変更することは、以前から検討されていたことだと声明を発表している。同大学の中国研究者、ウィリアム・C・カービィー教授は、地政学的な緊張が続くなか、中国との関係を維持・進化させる方法を大学は模索し続けると述べ、中国との関係から手を引くわけではないことを示した(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。プログラムの新パートナーとなる国立台湾大学も、計画は2019年から話し合われており、2020年開始の予定が、パンデミックで遅れたという説明をしている(AP)。

◆台湾復権? リアルな中国を知る機会は減少
 プログラムは、ハーバード台北アカデミーとして来夏台北で開催となる。台湾は以前、外交官、学者、報道関係者なども学ぶ中国語学習の中心地だったが、中国本土の台頭でその地位は低下していた。今回は復権の大きなチャンスでもあり、国立台湾大学は、自由な環境で優秀なハーバードの学生が中国語の基礎を築くことを期待するとしている(AP)。

 もっともAPによれば、北京研修に参加した学生は、体制の違う中国のミレニアル世代との交流を楽しんでいたという。米中関係が冷え込むなか、互いの交流のチャンスがまた一つ減っていくことになる。カービー氏は、1950年代に米中の大学の活気ある関係が断ち切られ双方の損失になったとし、同じことを繰り返してはならないと述べている(NYT)。

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Text by 山川 真智子