「ワクチン接種で当たる・もらえる」5億円、学費、銃、マリファナ……米で多様なキャンペーン

コロラド州のワクチン宝くじに当選した男性|David Zalubowski

 今年1月のバイデン大統領就任後、急ピッチで新型コロナワクチンの接種を進めてきたアメリカ。その後5ヶ月が過ぎ、ワクチン接種率が上がると同時に、一時は全米で30万人もいた1日の新規感染者は、ジョンズ・ホプキンス大学統計によると、6月20日は3892人と激減した。また米疾病対策センター(CDC)の統計によると、アメリカ全体のワクチン接種完了率は21日現在45.2%、1回目の接種を終えた成人の割合は同日現在65.4%で、バイデン大統領の7月4日(独立記念日)までの目標であった70%にあと5%弱と迫っている。

 しかしその一方で、一番接種完了率が高いバーモント州(57.56%)と、最下位のミシシッピ州(26.88%)では30%以上の開きがあり、接種率が高い民主党州と、低い共和党州の差が次第に広がっているのが現状だ。12歳以上なら全国どこでもすぐに接種が受けられる状況下で未接種の人々が多いのは、新型コロナウイルス自体やワクチンを疑問視するか、またはワクチンの副反応を恐れる人々が多い証拠だろう。そこで、一部の州はワクチン接種にさまざまな特典をつける「ワクチン・インセンティブ・プログラム」で、接種をためらっている人々を勧誘する作戦に出た。

◆賞金億超えの宝くじも
 アメリカでは現在、多くの州が多種多様のワクチン・インセンティブを展開しているが、なかでも最も人気があるのは「ワクチン宝くじ」だ。オハイオ州では5月から、ワクチン接種を受けた場合、毎週抽選で100万ドル(約1億1千万円)の賞金、または大学全費用が当たるプログラムを開始。これまでに各4人の当選者が出ている。またカリフォルニア州でも同様の宝くじを開始。CBSニュース(電子版)によると、こちらの賞金は1人150万ドル(約1億6500万円)、総額1165万ドル(約12億8000万円)という太っ腹である。両州とも宝くじ参加を申し込む必要はなく、ワクチン接種を受ければ自動的に参加できる仕組みとなっている。同記事によると、民族が多様で人口が多いカリフォルニア州ではすでに2000万人が接種を受けたものの、1200万人が未接種で、同州政府では未接種の人々に接種を受けるモチベーションを与える目的でインセンティブプログラムを開始したという。

 芸能情報誌ピープル(電子版)によると、オレゴン州やニューメキシコ州でも同様の宝くじ抽選が行われる。またネバダ州の地元ニュースウェブサイト『This is RENO』によると、6月17日には同州のシソラック知事が総額500万ドル(約5億5000万円)に上るワクチン宝くじやほかの特典の実施を発表した。

 ワクチンインセンティブは州政府規模だけではなく、ドーナツ店クリスピークリームやビール会社アンハイザー・ブッシュなど、ワクチン接種を受けた人に無料で商品を供与する企業も多くある。

Text by 川島 実佳