「ワクチン接種者はマスク不要」CDC新指針でトラブル発生

マスク着用令が廃止されたシカゴの様子(5月22日)|Nam Y. Huh / AP Photo

 一方、CDCの新指針公表後、ハワイ州とマサチューセッツ州ではいまのところマスク着用令を続けると発表した。ホノルル・スターアドバタイザー紙(電子版)によると、ハワイ州ではその後5月25日になり、ワクチン接種済みか否かにかかわらず、屋外におけるマスク着用令を即廃止するとイゲ州知事が公表。しかし筆者が見たところでは、発表後2日経過したいまも、街中ではほとんどの人々がマスクをしている。しかし、ビーチなど自然のなかではこの限りではなく、マスクをしている人としていない人は半々程度だ。

◆ハワイで観光客のマスクトラブル発生
 筆者の居住するハワイ州では、いまも私有ビジネスや公的施設をはじめとする屋内でマスク着用を義務付けている。ハワイ州には住民だけでなく、マスク条例が弱い(あるいは皆無の)他州から訪れる観光客も多いため、感染拡大予防のためにも、より厳しい条例で統制することが重要だ。イゲ州知事は、「ウイルスはいまも出回っており、まだワクチン接種を受けていない人が危険にさらされるため、もっと多くの人々がワクチン接種を受けるまでは、接種済みかどうかにかかわらず、屋内や大勢での集まりではマスク着用が必要」と述べた。しかし、今回の指針変更で、マスクなしで出歩き、ビジネスなどでトラブルを起こす人々が増加するのではないかという懸念が生まれている。

 実際、全米で最も厳しいマスク着用条例があるハワイ州で、早速マスクを軽視する観光客と地元住民の間でマスク着用をめぐるトラブルが発生した。ニューズウィークによると、マウイ西部ラハイナの中華料理店に、マスクを着けず入ってきたフロリダ州からの観光客を地元住民男性が注意したところ、「君はここの従業員か? 自分のことに専念していろ」と言い返され、胸を小突かれた。その後殴り合いの喧嘩に発展したという。

 ハワイ州ではこれまで、少なくとも住民の間ではマスク着用に関するトラブルを聞いたことがなかった。米本土でマスク着用に関するトラブルのニュースが昨年から多発しているなか、ハワイではイゲ州知事が屋内でのマスク着用をいまも全員に義務付けていることに安心している人が多いはずだ。本土からの観光客数がほぼ例年に戻っているハワイで、今後CDCの新指針で混乱した観光客がマスク着用をめぐるトラブルを起こさないことを祈るばかりである。

【関連記事】
ワクチン接種者の旅行熱が欧米で再燃 遅れ目立つ日本
共和党州にもマスク着用令拡大 対策緩い中西部州で感染者増加
フランス人はなぜウレタンマスクをしないのか?

Text by 川島 実佳