ホームレスの人に住まい提供の大工、市から活動中止を求められる カナダ

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◆十分でない支援計画
 冬の間、氷点下の気温が続くカナダでは、この問題は大きな懸念事項である。とくに大都市トロントではシェルターがほぼ常に満員状態で、行き場をなくして極寒の路上に出ざるをえない人も少なくなく、まさに生死に直結する問題である。

 トロント市は昨年10月、2020〜21年冬に向けて新しいシェルターと休憩可能なスペースを合わせて560人分追加する計画を発表した(blogTo、11月)。これによって市内で利用可能なシェルタースペースの総数は6700となる予定だとした。しかし専門家は、トロントでホームレス状態にある人は1万人以上いるとしており、市の計画では不十分だと批判していた。

◆若き大工の男性、「小さなシェルター」を無償で製作、提供
 トロントの若き大工であるカリール・セイブライト氏は、この問題に対する一時的な対応策を考えついた。冬の間、屋外で生活せざるをえないホームレスの人のための「小さなシェルター(Tiny Shelter)」を無償で製作し、提供する活動を始めたのだ。シェルターは小さな木造コンテナ風で、壁には通常の住宅に使用される断熱材が何層にも張られており、体の熱だけで内部を暖かく保つことができる。セイブライト氏によると、外気温が-20度でも内部を16度前後に保つことが可能だという。またセキュリティのためドアは内外両方から施錠することができる。安全面にも配慮しており、一酸化炭素検出器と煙警報器が備えつけられている。

 セイブライト氏は、これまで見たことのないほど多くの人が路上で暮らしている状況を目にし、自分にできることを考えてシェルターの製作を始めたとCBCに語った。同時に彼は「自分の活動は、ホームレスの人が冬の路上で命を落とさないようにするための一時的な解決策でしかない」とも話している(同)。

 彼の活動に賛同する市民は多く、活動資金調達のためのクラウドファンディングでは、現在のところ24万3937カナダドル(約2081万円)を獲得している。

Text by 中原加晴