達成までにアメリカでは120万人死亡 「集団免疫」が幻想の理由

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 コロナ感染拡大の初期に、切り札として「集団免疫」が注目を浴びた。後に撤回されたが、最初にイギリスが集団免疫戦略を取ると発表。スウェーデンもロックダウンなしの緩やかな対策を選択し、結果的には集団免疫が期待できるとしていた。最近ではアメリカの感染症疫学者らがロックダウンよりも集団免疫獲得が望ましいという見解を示しており、各国を第2波が襲うなか再び注目されている。

◆ロックダウン反対 自然に感染で集団免疫を
 集団免疫とは、集団の大多数の人が免疫を持つことで、感染者と接触する機会が低下し、感染の拡大が抑えられる効果を指す。獲得するには二つの道がある。一つは、人口の多くがウイルスに感染し免疫を獲得する場合で、もう一つはワクチンの利用による。ワクチンは開発中なので、これまで話題にされてきたのは前者のほうだ。

 イギリスの当初の説明では、できるだけ多くの人が感染し免疫をつけておけば、冬以降の第2波に対する防御になるとされていた。スウェーデンの場合は、直接的に集団免疫を目標にしたわけではなかったが、徐々に感染が広がることによって得られた集団免疫で、その後の感染を抑える効果が期待されていた。

 感染が収まらないアメリカでは、感染症疫学者および公衆衛生科学者である3名の専門家から「グレートバリントン宣言」が出された。これは、ロックダウンは経済や社会に与える負の影響が大きすぎるため、高齢者など弱者を保護したうえで「死亡リスクが低い人々には普段の生活を許し、自然感染を通じてウイルスに対する免疫を獲得する」という提言だ。

Text by 山川 真智子