達成までにアメリカでは120万人死亡 「集団免疫」が幻想の理由

Robert F. Bukaty / AP Photo

◆犠牲は甚大、達成は非現実的
 もっとも、自然な集団免疫に頼ることの問題点が多くの専門家から指摘されている。集団免疫は、人口の60~70%が感染すれば獲得できるとされているが、それ以上必要という説もある。現在の死亡率から推定すると、アメリカでは集団免疫獲得までに少なくとも120万人が死亡することになり、あまりに犠牲が大きい(NBCニュース)。

 グレートバリントン宣言では弱者を守り若者に感染を広げるとしているが、ビジネスインサイダー誌は不可能だとする。実際にスウェーデンでは老人ホームなどで介護スタッフから感染が広がり多くの犠牲者を出したことはよく知られている。そこでアメリカでは介護スタッフに迅速検査キットによる検査を行ったが、精度が悪くうまくいかなかった。また、コロナでは症状が出る前に他人に感染させてしまうことがわかっているが、無症状の段階で感染者を隔離するのはほぼ無理だとしている。

 さらに、COVID-19には長期の副作用が報告されており未解明のことも多いため、若者だから感染しても大丈夫とは言えないこと、人々の生活に悪影響を及ぼすと言っても実際にロックダウンで多くの命が救われたこと、ニュージーランド、中国、台湾など、厳しく効果的な対策で感染をほぼゼロにした国もあることをあげ、集団免疫に頼らずともウイルスを排除する方法はあると同誌は指摘している。

◆免疫は続かない ワクチンを待つのが最善策
 感染による集団免疫頼みの最大の問題は、コロナウイルスに対する免疫は時間とともに衰えると思われることだ。だとすれば、たとえ国民全員が感染しても、集団免疫戦略はうまくいかないだろうとビジネスインサイダー誌は述べている。

 スウェーデンのコロナ対策をリードするアンデシュ・テグネル氏は、秋には第2波が来るが、スウェーデンは高いレベルの免疫を獲得し感染者数もかなり少なくなるだろうと5月に発言した。しかし、感染者数は11月2週目時点で過去最高を記録している。同氏は厳しい第2波の到来を認め、スウェーデンの免疫が以前推定したものより低そうだという見解を示した。現在、より厳しい移動規制や飲食店利用のルール強化が行われている(英版ヤフーニュース)。

 結局のところ、ワクチンができるまでは、検査・追跡・隔離の強化、ソーシャルディスタンシング、マスク着用の徹底などで、コミュニティでの感染をうまくコントロールするしかないと多くの専門家は見ている。開発中のワクチンの有効性に関するポジティブなニュースも増えており、今後はワクチンによる集団免疫獲得に関心が移るだろう。

Text by 山川 真智子