「愛は観光ではない」国境をまたぐ恋人・家族、入国制限に例外求める

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◆当事者の訴えがEUを動かした
 同じ想いを抱えた人たちと繋がりたい、そんな想いで作られた「Love Is Not Tourism」のグループは、次第に大きなムーブメントへと変貌した。BBCCNNなど主要なメディアもこのムーブメントを取り上げ、運動を後押しした。現在、フェイスブックグループのメンバーは27000人を超える。恋人や家族同士が再開できるようEU域外からの入国規制に例外を求めるオンライン署名は、8月現在、32000筆以上が集まっている。

 この当事者の連帯が、各国政府、そしてEUを動かした。デンマークが6月に他国に住む恋人や非婚家族に対して国境を開いたことを皮切りに、ノルウェー、オランダ、オーストリア、アイスランドが規制に例外を認めた。

 そして8月7日、欧州委員会はEU加盟27ヶ国すべてに向けて、恋人や非婚家族に対して国境を開くよう求めた。欧州委員会のツイッター投稿には、同メッセージと「#愛は観光じゃない」のハッシュタグが並んでいた。

◆国境解放後も続く混乱
 規制に例外を認める国の数は徐々に増加し、現在11ヶ国が恋人や非婚家族に国境を開いている。しかし各国によって入国の条件はさまざまだ。たとえばノルウェーでは交際期間が9ヶ月以上の人たちのみに限られているし、ドイツではパスポートの入国スタンプなど交際中の往来が証明できるものの提示が必要だったりする。また別の問題として、直行便の就航がない国同士の場合、経由国が入国を拒否するケースもある。

 世界中の恋人たちの愛をかけた闘いは、当分続きそうだ。

Text by 中原加晴