新たな希望のストーリーを投げかける、「二人のオバマ」の挑戦

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◆Netflixでの映画プロジェクトは好評
 二人のオバマが仕掛けるHigher Groundは、Netflixとも数年間に渡る契約を締結し、ドキュメンタリー映画をプロデュースする。昨年、公開された最初のドキュメンタリー映画『アメリカン・ファクトリー』は、閉鎖となったジェネラル・モーターズのオハイオ州の工場を、中国の自動車部品メーカー、フーヤオ(Fuyao、福耀集団)が買収し、米国内におけるフロントガラス工場として「再建」に挑むストーリーを追った映画だ。米国側と中国側、経営陣と労働者、地域住民といったさまざまな登場人物を同等に扱い、それぞれの視点と意見を取り入れた作品は、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、エミー賞にも3部門にノミネートされている。また、今年の5月にリリースした、ミシェルのブックツアーを記録したドキュメンタリー映画『Becoming』も、エミー賞4部門にノミネートされている。

 Higher Groundは、二人のそれぞれの関心分野に関連し、見過ごされてきた視点や人物に光をあてるような映画プロジェクトをプロデュース予定だ。奴隷制度廃止を唱えた元奴隷の活動家フレデリック・ダグラスの伝記の映画化、食育に関する映画、第二次大戦後のニューヨークにおける女性や有色人種の功績に関する物語の映画など、複数のプロジェクトが発表されている

 ホワイトハウスを去って以来、バラク・オバマ前大統領はその存在感を控えめにしてきた。最近、ジョー・バイデン前副大統領の次期大統領選の応援演説などで、少しずつ発言の機会が増えてはいるものの、トランプ大統領を名指しにした批判をすることはしない。パンデミックを受けての経済不安や、黒人に対する相次ぐ殺害と「Black Lives Matter」の抗議行動といった人種をめぐる社会不安が拡大するなか、米国民は希望的なリーダーシップを求めている。

「The Michelle Obama Podcast」やNetflixの映画を通じて発信される、二人のオバマのメッセージは、米国民が希望を取り戻すための、きっかけとなりうるのだろうか。いずれにせよ、この二人の動向に対して、世界は注目の眼差しを向け続けるはずだ。

Text by MAKI NAKATA