新たな希望のストーリーを投げかける、「二人のオバマ」の挑戦

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「社会課題ついて考える場、私たち皆が抱える問いについての回答を探る場、そしてオープンになって、時には弱さをもさらけ出す場」。自らがホストを務める、新しいポッドキャスト番組『The Michelle Obama Podcast』について、ミシェル・オバマはこう説明する。先月リリースされたポッドキャスト第1話のゲストは、バラク・オバマ前大統領。ポッドキャストは、オバマ大統領が退任後、二人が共同創業したメディア制作会社Higher Ground Productions(Higher Ground)によるプロジェクトの一つだ。「二人のオバマ」が手がける、新たなる「政治発信」の試みとは。

◆「シカゴ・サウスサイド出身のわたし」とYes We Canな男
 7月29日、Spotify限定で配信された『The Michelle Obama Podcast』の第1話は、二人のオバマが繰り広げる約50分弱の長さの会話だ。今回新しく開始したこのポッドキャストの初回シリーズは、ミシェルの家族や親しい友人が各回のゲストとして登場予定だが、いわゆるインタビュー形式ではなくカジュアルな会話スタイルで進行する。ホワイトハウスを去ってから、バラクよりも先に回顧録『Becoming(マイ・ストーリー)』を出版し、全米と国外主要都市にてブックツアーを行ったミシェル。大会場での大観衆を相手にした、著名司会者とのインタビューだけでなく、小規模のコミュニティ・グループや高校生らとの、近い距離感での対話も多くこなすなか、彼女自身を含めた個人や米国社会が抱えるさまざまな課題に関する「会話」を継続したいと考えた。こうした彼女の経験や想い、「語り合いたい、喋り合いたい」という純粋な気持ちが、今回のポッドキャストの背景にある。第1話の終盤、バラクが、真面目に締めくくろうとするミシェルを遮り、「We like talking!(ぼくたち、話すのが好きだからね!)」と言う場面があるが、視聴者にとっては、彼らの「食卓の会話」に参加しているかのような気分になれる番組だ。

 一方で、それぞれの生い立ちを振り返る、彼らの飾らない会話のなかには、二人の価値観が滲み出ている。親世代の努力と犠牲を理解したうえでの、「アメリカの黒人」としての責任感や連帯感。米国社会におけるコミュニティの重要性。娘たちを含めた若い世代に対する希望と不安。米国の人種問題と黒人コミュニティにとって歴史的に重要な地域であるシカゴ・サウスサイド出身のミシェルと、「Yes, We Can!」のキャンペーンメッセージで2008年の大統領選挙を勝ち上がったバラク。利己的な個人主義に基づいたアプローチではなく、コミュニティや社会にも働きかけることこそが、個人の幸せに還元されるという彼らの価値観。これは、(マスク着用への抵抗や銃所有の権利を主張する威嚇的行為など)行き過ぎた個人主義的な権利主張や20世紀的な資本主義の課題が、社会不安や経済格差という形で顕在化する米国社会に対する、国民へのメッセージとも受け取れる。(ポッドキャストの全文は、Spotifyのサイトからダウンロードできる。)

Text by MAKI NAKATA