人為的にコロナに感染させてワクチン開発 チャレンジ治験に賛否

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 新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでおり、秋までには多くのボランティアを使った治験が始まる予定だ。通常では、治験参加者をワクチン投与後に各自のコミュニティに戻し、効果を確かめる。しかし大規模かつ時間を要することから、ワクチン投与後に参加者をウイルスに人為的に感染させる「チャレンジ治験」が注目されている。倫理的な問題もあり、その是非が議論になっている。

◆ノーベル賞受賞者も支持 ワクチン開発加速求める
 サイエンス誌によれば、チャレンジ治験は新型コロナのパンデミックの初期から、ワクチンの効果を早く見極めるやり方として、一部の研究者により提唱されてきた。ウイルスに感染しても良いという多くのボランティアと、治験用に作られたウイルスが必要になるが、これらの主要課題が現在ほぼ解決したとされる。

 チャレンジ治験を支持する団体「1 Day Sooner」によって、世界140ヶ国からの3万人以上のボランティア供給が可能になった。同団体は7月15日に、15人のノーベル賞受賞者と100人の著名な研究者、倫理学者、哲学者によって署名された公開書簡を米国立衛生研究所の所長宛に送付し、米政府にチャレンジ治験の準備を求めた。

 ボランティアに意図的にウイルスを感染させるチャレンジ治験では、厳しい「製造管理と品質管理」のもと、バイオセーフティレベル3の実験室において増殖されたウイルスが必要になる。前述の書簡の署名者の一人で、オックスフォード大学でワクチンを開発するアイドリアン・ヒル氏の実験室と、ロサンゼルスのバイオテック・スタートアップCurative社がチャレンジ治験用のウイルス株を作ることに同意している(サイエンス誌)。

Text by 山川 真智子