「ディファンド・ポリス」という合言葉と、現実的な警察改革の形 米抗議デモ

Charlie Riedel / AP Photo

♦︎警察業務の縮小を望む声
 警察予算のカットは、非常にラディカルな提言のようにも思われる。犯罪を取り締まる当局なくして、社会の治安維持は難しいからだ。実際のところ、「ディファンド・ザ・ポリス」運動を支持する人々のあいだでも、訴えの内容には開きがある。予算停止と警察組織の全面解体を求める声も強いが、識者のあいだでは現実的な策として、予算の縮小とそれに伴う一部業務のコミュニティ・サービスへの委譲が提言されている。ジョージタウン・ロースクール教授のクリスティ・ロペス氏は、ワシントン・ポスト紙に寄せた記事(6月8日)のなかで、「治安維持の問題を改善するためには、我々はまず、警察権力にいかに過剰に依存するようになってきたかを認識しなければならない」と述べている。「ディファンド・ザ・ポリス」運動のあるべき成果は、警察予算をゼロにしたり組織を解体したりすることではなく、警察の業務範囲を限定し、その他をより適切な機関に任せることだ、と教授は主張する。なにかにつけて武装警官を派遣するよりも、精神ケアや暴力を抑止する地域のプログラムに予算を割く方が適切であるとの主張だ。

 CNNも同様に、コミュニティの力を活用したサービスに重点を移すべきだとの専門家の見解を伝えている。中毒患者や精神疾患者への対応から警察が手を引くとなれば、「割れ窓理論」が是としてきた、小さな社会問題への積極的な関与とはまったく別の路線を行くことになる。しかし実際のところ、こうした予防的な行動を警察が控えることにより、地域の犯罪はかえって減少したとの調査結果も過去には出ている。

♦︎既存組織の維持が現実的か
 組織改革の必要性は誰もが認識するところだが、上述のような意見とは異なり、必ずしも警察の対応範囲を縮小する必要はないと考える人々もいる。その主張内容は、現状の警察の予算と業務範囲を維持しつつも、より広い社会問題に対応できるよう適切なトレーニングを積むべきというものだ。政治評論家のマリア・カルドナ氏は米政治紙のザ・ヒルへの寄稿記事のなかで、「ディファンド・ザ・ポリス」とのスローガンは必ずしも適切ではないと論じている。拠出停止ではなく、社会問題に対処できるよう警官のトレーニングに予算を振り向けるなど、組織のあり方を再考することが必要だと氏は訴える。

 WSJ紙も同様の論調だ。警察の縮小と地域機関への業務移行は理想的だが、現実には警察が社会問題への対応から即座に手を引けるわけではない。そこで、たとえばメンタルヘルスに問題を抱えた市民にも対応できるよう警官の専門的なトレーニングに予算を回すなど、現状の組織の改革を同時進行するよう同紙は提言している。

 武力による解決が行き詰まりを見せている米警察に、社会問題へのより柔軟な対応が求められている。

Text by 青葉やまと

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