「陰のパンデミック」世界で増えるDV ロックダウンが生む負の側面

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◆各国のDV被害状況
 ニューヨークでは、家庭内暴力ホットラインへの電話の件数が2月から3月に18%急増し、4月の件数は、昨年の同月よりもすでに30%高い。ニューヨークの当局者は、加害者も家にいる時間が増えたことでさらなる監視が可能になり、ホットラインに連絡することもできない多くの虐待被害者がいる可能性もあると指摘した。

 ヨーロッパでも同様のデータが出ている。ロンドンでは、4月19日までの6週間で家庭内暴力罪で4093人を逮捕した。犯罪として登録されていない事件を含めると、同時期に1万7275件の家庭内暴力事件が発生。この数字は、昨年の同時期と比べて9%増加している。またイングランドと西部ウェールズでは、外出制限が始まって以降、週末に寄せられた家庭内暴力に関する電話相談の件数が65%増加した。フランスでも同様、警察に報告された家庭内暴力の件数は一週間で36%増加した。3月27日から全土で外出制限が開始された南アフリカでは、最初の一週間だけですでに8万7000件を超えるDV被害の訴えが寄せられた。

◆今後の対策が鍵
 家庭内暴力の被害者が避難するシェルターなども感染拡大を防ぐために受け入れを制限しているため、被害者をいかに支援することができるかが大きな課題となる。各国政府はさまざまな政策や補助金により支援を強化しようと動いている。カナダ政府は、DV被害者のシェルターなどの整備のために4000万カナダドル(約30億円)を拠出することを発表した。シカゴがあるイリノイ州では、120万ドル(約1億3000万円)をDV被害者の支援にあてると発表し、ホテルやモーテルでも被害者を保護できるよう措置をとる。

 家庭内暴力は、コロナウイルスが発生する以前から過去12ヶ月で2億4300万人の女性(15歳から49歳)が身近なパートナーによる性的・身体的暴力の対象となるほど大きな人権侵害の一つであったが、家庭で過ごす時間が増えることによるストレスや苛立ちにより、さらにこの数字が増えることは否めない。今後、各国政府による対策やサポートシステムの構築が求められる。

Text by sayaka ishida