封じ込めはできない? 懸念される軽症・無症状者からの感染拡大 新型肺炎

Muzzafar Kasim / Malaysia's Ministry of Health via AP

◆感染拡大は不可避? 中国式は真似できず
 一方で専門家のなかには、感染拡大は避けられないという見方もある。アトランティック誌は、ハーバード大学の感染症専門家、マーク・リプシッチ氏の「最終的に封じ込められないという結果になりそうだ」というコメントを紹介している。感染発生への対応の第一歩は封じ込めだが、COVID-19の場合はSARSと違って症状がない、または軽い感染者も多い。彼らが気づかず広げてしまうのであれば、症状が出ている人に検査をしても不完全だと同誌は指摘し、理想的な封じ込め策をとっても、ウイルスが広がるのは明らかだとしている。

 WHOは中国が徹底した封じ込め策で危機を脱しつつあることを称賛し、他国も参考にすべきとしているが、サイエンス・マガジンは、独裁国家が課した都市封鎖や通信機器を用いた監視などによる対策を他国が採用できるかどうかは疑問だとしている。また、中国でさえも厳しい規制が解除され経済活動が再開されれば、COVID-19の再燃もあり得るとしており、ウイルスに関する不確実性は依然として残るとしている。

◆風邪やインフルと同じに? ウイルスとの共生へ
 リプシッチ氏は、来年には、世界の40~70%の人が新型ウイルスに感染すると予測している。ただし、全員が重症となるわけではなく、多くが軽症、または無症状のまま、医師のケアなしで終わってしまうと見ている。リプシッチ氏だけでなく多くの専門家が感染の拡大を予測しており、おそらく今回のアウトブレイクの結果が、新たな季節性の病気の流行になると見ている(アトランティック誌)。

 現在人に日常的に感染し風邪などを引き起こすコロナウイルスには4種類があるが、長期間持続する免疫はつかないとされる。もし新型ウイルスがその先例に従うとすれば、そしていまと同程度の病状を引き起こすのであれば、「風邪とインフルの季節」は「風邪とインフルと、第5のコロナウィルスによるCOVID-19の季節」になるというわけだ(同上)。

 アトランティック誌は、現状データの少ないなか、今後の予測は難しいとしながらも、ウイルスの封じ込めができず今後共生していかねばならないのなら、命を救うための明確な戦略であるワクチンの開発に関心が集まるとしている。

Text by 山川 真智子