ロンドン地下鉄で高濃度PM2.5 地上の30倍汚染の路線も

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◆清掃も効果薄 地下は粉塵の宝庫
 ロンドン地下鉄の利用者は、1日あたりのべ480万人とされているのに、一部を除きその健康被害に関する研究や報告書はほとんどなかったとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は述べる。同紙はロンドン地下鉄の空気の質を独自に調査し、汚染の度合いは危険なレベルで、WHO(世界保健機構)のガイドラインの10倍だと指摘している。

 実はロンドン地下鉄では、終電後から始発までの間に清掃作業を行っている。1987年に起きた、火のついたマッチが木製エスカレーターに燃え移り、31人が亡くなった地下鉄火災以来、ゴミ掃除が強化された。空気汚染対策としての清掃強化は、2016年に現在のカーン市長が就任してからということだ。チームで床、壁、レールなどを掃除して回るが、一晩に50メートルしか進まない難所もあり、400キロにもなる地下鉄ネットワークを網羅するには数年かかるとFTは述べる。

 地下鉄を管理するロンドン交通局(TfL)によれば、塵やほこりの多くは、乗客由来と、線路と車輪の摩擦から生じる鉄由来だ。ベイカールー線の清掃では、6.4トンの髪の毛、皮膚、洋服から出た綿毛、鉄の粒子が集められている。清掃車両導入も検討されたが、強力な吸引力で壁の古いアスベストが飛散することが懸念され、手作業が適切と判断された。ただ、手作業でもひどく汚れた場所では清掃で小さな粒子が舞い上がり、かえって空気が悪くなるケースもあるという。

 そもそも1863年に開業した当時は、地下鉄は石炭による蒸気エンジンを利用していたため、古い路線には地上への空気穴が取りつけられている。よってこれらの路線の汚染はまだ良いほうだという。その後に地中深くに掘られた路線では、電車が通り抜けるときのピストン効果を利用して、新鮮な空気を送り込む設計だった。ところが長年かけて線路内に塵が降り積もり、ピストン効果で微小な最も危ない粒子が空気を通じて運ばれることになってしまったとFTは解説している。

 英イブニング・スタンダード紙によれば、地下鉄の空気汚染対策として、微生物の働きによって汚染物質を分解し、空気の改善を図ろうという研究も行われているが、現時点で有効な対策はないようだ。

◆日本の地下鉄大丈夫? 汚染はロンドンだけではない
 COMEAP委員長のフランク・ケリー教授は、地下鉄のなかにいる時間が比較的短いこと、また有害という確証がないことから利用自体は続けるべきだと述べている(ガーディアン紙)。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのトマス・スミス准教授も、金属が多い地下鉄の微粒子の成分は、大気中のものとは異なるとし、人体への害は十分な研究結果がないのでわからないとしている(FT)。COMEAP自体は、地下鉄利用者によって吸い込まれる埃の毒性については、さらなる調査が必要だという見解だ。

 FTは、この問題はロンドンに留まらず、トロント、ニューヨーク、ソウルなどでも地上を上回る空気汚染が地下鉄で報告されていると述べている。日本の大都市にも地下鉄網が張りめぐらされ主要な通勤手段となっているだけに、今後の調査、研究の結果に注目したい。

Text by 山川 真智子

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