元入居者が語る、スイスのDVシェルター

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◆年間1200人……シェルター入居を断られる女性たち
 スイスには、DVに関しての相談窓口がある。深刻な場合は、女性と子供は一時避難用の保護施設(いわゆるシェルター)に入って生活することができる。この保護施設は全国に約20ある。入居者たちの安全のため、所在地を公開していない施設もある。滞在は無料だ。

 施設は民間運営だが自治体の資金援助を受けている。寄付も運営に当てられる。自治体の資金援助は地域によってばらつきがあり、寄付だけで運営している施設もあるという。

 入居は昼夜問わず、いつでも受けつけている。警察が施設へ連絡する場合もあるが、自分で連絡して入居することもできる。客観的な判断は施設が行う。24人収容できるチューリヒのフラウエンハウス・チューリヒ・ヴィオレッタを例にとると、まず電話をしてスタッフに事情を話し、入居すべきだと認められた場合、待ち合わせ場所を教えられ、そこへ行くと施設へ連れて行ってくれる。

 1987年に作られたスイスと隣国リヒテンシュタインの保護施設が加盟する組織DAOは、「1年で1200人以上が入居できなかった。4人に1人の入居希望者を断らないといけない状況だ」とサイトに書いている

 一般有力紙ターゲス・アンツァイガーによると、施設を出てしまうと安全に(管理されて)生活できる場所が見つからないことから、多くの人たちが必要以上に長く入居していて、保護施設の平均稼働率は70~90%と高過ぎる状況だという。緊急に入居しないといけない人たちが入れないことが起きている。

Text by 岩澤 里美