ヴァイキングの女戦士、アフリカのアマゾン 実在した戦う女性たちに脚光

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◆ギリシャ神話の「アマゾネス」を掘り下げる動きも
『ワンダーウーマン』の主人公ダイアナ、『ブラック・パンサー』で王の親衛隊を務める女性戦士団「ドラ・メラーシェ」のルーツは、ギリシャ神話でおなじみの母系部族「アマゾン(アマゾネス)」だ。このアマゾンも近年、遺骨の調査などから実在が証明されている。

 アマゾンが活躍したのが、17世紀に成立した西アフリカのダホメ王国(現ベナン共和国)。19世紀のゲゾ王の頃、王の護衛を務めたアマゾンも最盛期を迎え、数千人に達した。だが19世紀末、フランス軍との戦いで散り、数十人にまで減ったという。

『ブラック・パンサー』との関連からその歴史を特集したBBCによると、その末裔は現在、寺院などで宗教的儀式を行っている。女性の地位が上がりつつあるアフリカでは、映画の影響もあり、過去の女性の役割に興味を持つ人も増えているそうだ。

◆埋もれてきた黒人の女性闘士
 19世紀初頭、革命により建国されたハイチは、近代史上初の黒人の共和国である。「建国の父」として高名なのがジャン=ジャック・デサリーヌだが、彼を闘士に育てたアブダラ・トヤ(別名ビクトリア・モントゥ)という女性がいたことはあまり知られていない。彼女もダホメ王国のアマゾンの一員だった。

フェイス・トゥ・フェイス・アフリカ』では、歴史に埋もれてきたアブダラを、英雄を育てた女性戦士として特集している。彼女はダホメでは議員や「治癒者」としても活躍するなどカリスマ性あふれる人物だったが、ダホメが仏領になると奴隷としてハイチへ送られた。やがてジャンに戦闘方法を教えつつ自らも軍を率い、労働者たちを治癒したという。奴隷解放と独立に際して多大な功績を残した、規格外の女性だったのだ。

 歴史上の女性兵士は、家父長制からの解放など社会的地位の変化について考えさせるテーマだ。今後も、物語の「SHERO」たちが社会を刺激し、さらに新たな物語を生んでいくことだろう。

Text by 伊藤 春奈