ヴァイキングの女戦士、アフリカのアマゾン 実在した戦う女性たちに脚光

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 映画『ワンダーウーマン』、『キャプテン・マーベル』など、近年、娯楽界で戦う女性が目立つようになり、「SHERO(She+Hero)」という言葉も広まりつつある。同時に海外では、はるか昔に実在した女性戦士の研究が進んでおり、メディアが注視するようになっている。

◆「ヴァイキングの女性参謀」の墓に学会騒然
 世界中でヒットしているドラマ『ヴァイキング~海の覇者たち~』、『ゲーム・オブ・スローンズ』では、おもな舞台である欧州北方で、女性兵士も勇敢に戦う。彼女たちの造形のもとは北欧神話だが、2017年、ヴァイキングの女性戦士の実在を証明する研究結果が出され、学会が揺れた。

 19世紀末、スウェーデン南東部の町で、ヴァイキング戦士のものと思しき立派な墓が発掘された。考古学者らは、ともに埋葬された馬2頭や武器類、軍事戦略を立てるのに使われたと思われるゲーム盤などの状況から、参謀を務めた「男性」戦士の墓だとした。2014年以降、複数の研究チームが、未調査だった骨の分析を段階的に進め、DNA解析により女性の骨だとの結論が出たのだ。

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 米スミソニアン協会の『スミソニアン・ドットコム』は、その後の論争を整理し、歴史上の人物のジェンダーの扱いという新たな議論を提起した。たとえば、遺骨の主が「トランスジェンダーだった可能性」だが、この現代の概念を10世紀前の社会にあてはめることは不適切であり、逆に、現代人の理解を超えるジェンダー領域があった可能性も無視できないという。そもそも男性の墓だとの説は、墓の状況から戦士だと目され、かつ戦士は男だという「常識」があったからだ。研究チームは、新たに「骨を女性だと証明するまでは、戦士かどうかを問う議論すらなかった」とも述べており、今後も論争は続きそうだ。

「物語」により大衆に広まったイメージを、史実が崩すことの難しさは万国共通である。ヴァイキング研究者のジュディス・ジェシュは、ドラマがこの議論を活発にしたことを歓迎しつつも、研究と虚構の境界線は明確にすべきだと釘を刺す(ヒストリー・エキストラ)。ゲーム盤の存在のみを「女性参謀」の根拠にするのは心もとないとも批判した。欧米ではヴァイキング研究も盛んなだけに、メディアも注視しているようだ。

Text by 伊藤 春奈