旧原子炉実験場に延焼、カリフォルニア山火事 「煙に放射性物質」カーダシアン姉妹憂慮

Ringo H.W. Chiu / AP Photo

◆かつて原子炉10基が稼動、謎に包まれる実験場
 ロサンジェルスのNBC系ニュース局NBC4の報道レポート『LA’s Nuclear Secret(LAの核に関する秘密)』によると、サンタスザーナ原子炉実験場はサンフェルナンド・バレーとシミ・バレーの上部に位置する、およそ2,800エーカーにおよぶ米政府と私営企業が共同で原子炉の研究を行っていた場所である。1947年に実験場が起動した頃はまだ周囲に何もない僻地だったが、現在では旧実験場の周囲10マイル(16キロ)以内に約50万人の人々が住む大都市圏だ。

 同局の報道によると、一時期この実験場では10基の原子炉が稼動しており、ロケットや原子力エネルギー、兵器開発実験などが行われていた。米航空宇宙局(NASA)もここで多数の実験を行ったという。その実験場で1959年、原子炉1基で燃料棒溶融が発生し、放射性物質が漏れる大事故が起きた。しかし、当時米政府により真の放射能汚染が公にされることはなく、実際周囲の環境や住民の健康にどのような影響を及ぼしたか、今となっては謎である。

◆ウールジー火災発生で実験場の一部も延焼
 カリフォルニアにはサンタスザーナ原子炉実験場の除染を要求する団体も存在するが、ウールジー火災が発生するまで、周囲に住む一般市民は事の重大さに気付いていなかった印象がある。しかし、地元日刊紙ベンチュラ・カウンティー・スター(電子版)の11月12日付記事によると、ウールジー火災は同実験場付近で出火し、実験場の一部に延焼する事態に発展。有毒物質や放射性物質が放出されたのではないかという懸念が大きくなった。

 記事によると、同州有害物質管理局(DTSC)は12日に声明を発表し、「DTSCは(火災の被害)状況を注意深く監視している」「当局職員が11日に現地(実験場)入りして火災の被害状況を調査したが、以前放射性物質や有害物質扱っていた場所は火災の被害を受けていない」と述べた。

 今回の火災被害とサンタスザーナ原子炉実験場の件は、カーダシアン姉妹のツイートで世間に広く知られる結果になったが、もしこの事故が彼女たちの自宅近くで発生していなければ、真剣に環境を気にしたり、次期州知事に助けを求めたりしたかどうかは疑わしい。自分自身に被害が出てみて、人々はやっと事の重大さ、そして環境保護の大切さに気付くのかもしれない。

Text by 川島 実佳