フッ素なしの歯磨き粉、虫歯予防効果ないと専門家

AP Photo / Elaine Thompson

 歯科衛生の専門家は、最も重要な成分であるフッ素が入っていない、虫歯になるリスクを増大させる歯磨き粉を使っている人が増えていることに懸念を示している。

 ほとんどの歯磨き粉に配合されているフッ素。保健機関はフッ素の虫歯予防効果を認めているが、ネット上には、主に「自然派」歯磨き粉販売業者や代替医療推進派からの、フッ素無配合歯磨き粉にも虫歯予防効果があるとする意見が散見される。

 歯科医の権威はこれに対して異議を唱えている。

                                                                                                                 

「歯磨きで虫歯を防ぐという考えは誤りだと証明することが非常に重要です。フッ素は必要不可欠なのです」と、英国歯科医師会(British Dental Association)科学顧問兼バーミンガム大学歯学部教授のダミアン・ウォームズリー氏は話す。

 その見解は、歯科雑誌「Gerodontology」に今週掲載された、虫歯に関する科学論文を再検討した論文によって強調された。その主要な結論は、フッ素を用いない口腔衛生対策は、虫歯率に「何の影響を及ぼさない」というものだ。

 歯磨きだけでは虫歯を防げないという考えは、長年にわたって研究者の間で広く認められているが、世間では少々事情が違う。歯科医師は一般的に虫歯対策としてフッ素を勧めるが、歯のプラークを落とす方法でも虫歯を減らせるといまだに信じている医師もいる。8月6日に発表された研究結果は、少なくとも1人の歯科医師を戸惑わせた。

「これまで学び、正しいと信じて教えてきた原則に反しています」と新刊見本でこの研究を読み、結果の信用性を認めたニューヨーク大学教授で歯科医師のリチャード・ニーダーマン氏は述べる。「私にしてみれば、歯ブラシは口腔細菌の運搬手段に過ぎないと言っているようなものです」。

 フッ素の有用性は長年にわたり広く認められてきたため、この問題に関する研究は近年ほとんど行われなかった。今回の研究で、ワシントン大学の研究者は1950年以降の質の高い研究を探したが、発見したのはわずか3件だった。アメリカとイギリスで行われたその研究は、1977年から1981年にかけて発表されたもので、最長3年間デンタル・フロスと歯磨きを行った10~13歳の子ども合計743人を対象に実施された。

 この3件の研究全体を統計的に評価したところ、フッ素を用いない歯磨きやデンタル・フロスだけでは有意な虫歯の減少は見られなかった。

 歯磨き粉「クレスト」の製造元プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)でオーラル・ケア・ディレクターを務める歯科医師のJ・レスリー・ウィンストン氏によると、今回の研究は「重大な警告としての役割を果たしている」という。

 同氏は声明の中で、「大きな科学的根拠があるにもかかわらず、歯磨き粉はどれも同じだし、歯ブラシや歯間清掃器具で効果的に歯の清掃を行っていれば虫歯を予防できると信じている消費者が増加しています」と述べている。

 フッ素無配合歯磨き粉の市場シェアは非公開会社によって占められている。そのシェアは歯磨き粉市場全体の5%未満だが、推定成長率は毎年5%以上と業界筋は見積もっている。8月第2週、トムズ・オブ・メインのフッ素無配合歯磨き粉「アンチプラーク&ホワイトニング」が、アマゾンのオンライン購入プラットフォームの歯磨き粉部門売上第2位になった。

「当社が販売しているフッ素を配合していない製品は『虫歯予防』効果を謳っていません」と話すトムズ・オブ・メインのブランド・マネージャーを務めるポール・ジェッセン氏によると、同社の顧客はこのことを概ね理解しているという。

 しかし、アマゾンのカスタマーレビューには、同社のフッ素無配合歯磨き粉に虫歯予防効果があるという記述が散見される。あるカスタマーレビューは、「フッ素入りでなくても、定期的に歯磨きをすれば虫歯になるリスクは減る」と主張している。

 口腔ケア企業もそのような主張に陥っている。リヴァイティンのフッ素無配合歯磨き粉のウェブサイトは、「虫歯に負けない歯を作る」と謳っている。

 リヴァイティンの創設者で現在CSO(最高科学責任者)を務める歯科医師のジェラルド・カラトーラ氏は、今回の研究結果は「誤解を招く」もので、口腔細菌が健全に混在する状態こそ歯科衛生の要であることを最新の科学が示していると話す。「フッ素に虫歯予防効果があるとはまったく思いません」

 しかし、同社の虫歯予防の主張について、「早急にウェブサイトからその文言を削除することになるでしょう。ウェブサイトに載せるべき文言ではないし、載っていることも知りませんでした」と付け加えた。

 フッ素配合歯磨きとフッ素無配合歯磨きを販売しているシェフィールド・ファーマシューティカルズのCEOジェフ・デイヴィス氏は、フッ素に虫歯を減らす効果があることは「かなりはっきりしている」と話す。しかし、フッ素の大量摂取による悪影響を懸念する人々が少なからずおり、フッ素無配合の歯磨き粉を選ぶのだと説明する。

 歯科医師によると、フッ素を用いなくても、歯磨きには一定の効果がある。今回の研究論文の主執筆者である歯科医師でワシントン大学教授のフィリップ・フジョー氏は、フッ素を用いない口腔衛生による実際の虫歯予防効果は小さすぎたため研究で検出されなかった、あるいは、研究対象となった子どもたちには見られなかった効果が大人には見られた可能性があると話す。

 そして、同氏の研究では、歯磨きで歯肉の腫脹が減少した。また歯磨きは、歯に詰まった食物を除去し、口腔外科手術後の患者の回復を助ける。

 米国歯科医師会(American Dental Association: ADA)のスポークスマンを務める歯科医師のマシュー・メッシーナ氏によると、電動歯ブラシは、高齢者に多く見られる、歯茎に隠れている歯根にできる虫歯の予防に役立つ。これは今回の研究の範囲外だった。

「私たちの長年の論争を立証するこの研究は重要です」と同氏は付け加える。ADAはフッ素配合歯磨き粉の使用を推奨している。

 今回の研究は、フッ素配合歯磨き粉と同様にフッ素配合デンタル・リンスにも虫歯予防効果があると判明した、60,000人を対象にした研究の2009年の分析も引用している。

 2016年、デンタル・フロスの効果について科学的根拠に乏しいとAP通信が報じた。その結果、連邦政府は長年推奨してきたデンタル・フロスを米国人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)から削除した。

 今回の研究は、どのように虫歯ができるのかという問題を提起している。清掃が不十分な口内に残った食物から出た酸が歯のエナメル質を溶かすため虫歯は生じると長年考えられていた。つまり、歯を磨けば虫歯にはならないということだ。しかし、今回の研究は、歯ブラシやデンタル・フロスだけでは簡単に届かないエナメル質の小さな隙間で成長した虫歯という新たなモデルを論じている。
 
 フッ素の効果は確実だが、フッ素配合歯磨き粉やデンタル・リンスと同様の虫歯予防効果がフッ化物を添加した水道水にあるとする考えを批判する研究もある。いずれにせよ、保護を増強するためにフッ化物を添加した水とデンタル・ケア製品を組み合わせることは理に適っていると、ニューヨーク大学教授で歯科医師のニーダーマン氏は話す。

 最も効果的な虫歯予防法は、単純に食事中の糖分を減らすことだとする歯科医師の主張もある。

By JEFF DONN, AP National Writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP

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