「日本ではCHIKANに注意」 酔っ払いの“無礼講”が横行? 海外も注目する痴漢

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 東京五輪・パラリンピックの話題が増え、炎天下での対策など懸念事項も報じられるようになった。首都圏の電車内に急ピッチで設置されている防犯カメラは、テロ対策もあるが、いまや国際語となった「CHIKAN(痴漢)」対策の印象が強い。近年増えた女性専用車両をめぐる騒動を含め、海外メディアも関心を寄せている。

◆サッカーW杯に沸く渋谷でも「日本の悪名高い痴漢」が
 約20年前、都市部で導入が始まった女性専用車両に対し、男性差別だと主張する男性たちが車両に乗り込む事例が増え、今年2月には地下鉄千代田線と阪急京都線で発車が遅れるトラブルが起きた。香港の日刊英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は、男女間で新たな争いの種になっているとしてこの問題を報じ、リスクコミュニケーションに詳しい北海道文教大学・渡部淳准教授に見解を求めた。渡部氏によると、他人の価値観や敬意を守る日本社会がこの20年で大きく変わり、不寛容になっているという。

                                                                                                                 

 同紙はまた、サッカーW杯時に渋谷の町中で起きた痴漢被害も取材している。前述の渡部氏は、こうした状況で性暴力が起きるのは、酔った状態が言い訳として通用するからだと述べた。記事では、電車内の痴漢で逮捕された男が酔っていたと主張したこと、元TOKIOの山口達也が飲酒して強制わいせつに及んだことを指摘。いわゆる「無礼講」が土壌として残っていることに着目した。

◆日本渡航者に対する注意喚起、「傾向と対策」
 五輪を控えて電車に防犯カメラを設置するのは、痴漢に対する「海外の目」も意識していると思われる。日本の満員電車と痴漢は国際的に知れわたっており、外国人被害者も出ているからだ。海外では自国の渡航者に注意喚起をする動きも出ており、イギリス政府は、通勤電車での痴漢の報告はよくあり、日本の法律が性犯罪において被害者の方に大きな負担を強いることを呼びかけている

 公共の場での痴漢やセクハラは多くの国で起こりうるし、特に女性旅行者にとっては万国共通の悩みだ。ワシントン・ポスト紙は、性暴力を受ける可能性の高い国の事例と対策を紹介した。東京の事例では、酔った男性が犯行に及ぶ可能性が高いことを伝えており、加害者の手をつかみ「チカン」と叫ぶことをアドバイスしている。

◆痴漢がなくならないメカニズムを追究する向きも
 路上セクハラ対策を進めているフランスでは今春、現地に住む日本人女性の痴漢告発書『TCHIKAN』が出版され、50ものメディアが報じて話題となった。女性は日本に暮らしていた頃、6年間ほぼ毎日痴漢に遭ったが、周りにいた男性は誰も助けてくれなかったという。『Buzzfeed』は、日本の「攻撃文化」に注目し、その背景としてストレス社会、女性の地位の低さ、教育不足を挙げた。9割の被害者が警察に届け出ていないことから、声を上げにくい実態を指摘する。

 日本で最初に女性専用車両が検討されたのは、明治5(1872)年とかなり古い(このときは実現せず)。欧州に倣おうとしたとされるが、男女が同じ空間にいると危険だという慣例があったからでもある。その後、終戦期まで段階的に女性専用(女学生優先)車両が運用されていった。歴史を振り返ると、性倫理も海外目線への意識も、いまだ変わらない部分があるということだろう。

Text by 伊藤春奈

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