インフレ便乗値上げ? 米、ガソリン価格が前年の1.7倍に

Marta Lavandier / AP Photo

◆バイデン大統領はガソリン税休止を提案
 ガソリン価格の高騰はロシアによるウクライナ侵攻のせいだといわれるが、アメリカは元々ロシアからの輸入比率は低く、それほど供給に影響していることはないと思われる。シェルの第1四半期の調整後利益は91億ドル(昨年同期32億ドル)と過去最高となった。またBPやエクソンモービル、シェブロンも軒並み記録的な利益を上げており、決して石油会社の経費が上がり、それがガソリン価格に影響したわけではなさそうだ。つまりガソリン価格の高騰にはさまざまな理由はあるが、インフレの便乗値上げもその1つだろう。そしてガソリン価格が上がることで、ほかの物価も上がるという悪循環になっている。

 アメリカではバイデン大統領や民主党がガソリン価格を下げる努力をしているが、サステナブルな再生利用可能エネルギー事業の開発を促進して脱化石燃料を目指す民主党と、化石燃料により利益を上げる石油会社の間には深い溝が存在している。バイデン大統領は大手石油精製会社に石油製品を増産するよう促すと同時に、各社の高額利益を批判している。またCNBCによると、バイデン大統領は連邦ガソリン税を3ヶ月間休止するアイデアを提案しているが、このガソリン税は1ガロンの価格で18.4セントと決して高額ではなく、この分が下がったとしても焼石に水だろう。

 一方で、主に民主党知事がいる各州政府はガソリン価格を下げる努力を積極的に行っているようだ。カリフォルニア州の地元紙マーセド・サンスターによると、全米一高いガソリン価格を支払う同州では、なぜガソリン価格がここまで高騰したかについて調査委員会が結成され、原因が調査される。またウィスコンシン州の地元紙ミルウォーキー・ジャーナル・センチネルは、同州のトニー・エバース知事がガソリンスタンドでの便乗値上げを禁止する州知事命令を発令したと報道。またケンタッキー州のテレビ局LEX18によると、同州のアンディ・ベシア知事はガソリン高騰が理由で同州内に非常事態宣言を発令し、便乗値上げの責任を追及すると述べた。
 
 ここ10日間でアメリカ国内のガソリン価格が1ガロン10セントほど下がった理由は、ホワイトハウスからの石油会社の責任追及や、これらの州政府による地道な努力の賜物かもしれない。

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Text by 川島 実佳