未曾有の電力危機に瀕するインド 経済回復に大打撃

石炭を降ろすトラック(ビハール州ジャリア)|Aijaz Rahi / AP Photo

◆原因はさまざま コロナからの復活に冷や水
 石炭不足はさまざまな要因が絡み合って発生した。まず、今年は雨季が長引いたため、石炭の供給が通常のレベルに戻るのが大幅に遅れた。そして、パンデミックの第2波によって経済活動に影響が出て、石炭の在庫が必要なレベルまで蓄積されなかった。さらに、世界的な需要増のため輸入炭の価格が高騰して購入することができず、これが問題を複雑化させているという。(インディアン・エクスプレス紙

 需要面を見ると、経済活動が急回復し、大部分がパンデミック前の水準、またはそれ以上になっており、電力需要が予想外に急増した。インディア・トゥデイ紙によると、CILは今年の上半期に記録的な量の石炭を生産して対応している。しかし需要の急激な増加に追いつけず、現在の状況を招いている。

 インドの石炭価格はCILが決めているため、国際価格が上昇しても国内価格にはそれほど影響はないという。電力会社はコスト上昇分をほとんどの一般消費者に転嫁することはできない。よって石炭価格の上昇分は主に産業界の負担となる。(CNBC)

 政府は石炭不足の懸念を払しょくするため、供給は十分だと発表しているが、現在の危機が続いて高い輸入炭が増えれば、電力コストが急増し、製造業が影響を受ける。また、電力需要が大幅に増加すれば、電力を大量消費する産業の輸出を制限する措置がとられる可能性もあるとガンディー氏はCNBCに述べる。さらに、企業はコストを消費者に転嫁するため、インフレ懸念が強まっている。

◆石炭がないと生活できない、途上国インドの現実
 インドはいまこそ石炭への過剰な依存をやめて再生可能エネルギーへの移行を貪欲に進めるべきだという声もあるが、現実はそんなに簡単ではないとBBCは述べる。国内では直接的および間接的に400万人の人々が石炭産業に従事しており、貧しいコミュニティのライフラインになっている。炭鉱がなくなればこれらの人々は生活の糧を失うため、再エネシフトにはよく練られた戦略が必須だ。

 さらにインドにはいまだに電気を使えない人が数千万人いるとされる。炭鉱近くのスラム街では、石炭を使った屋外のかまどで料理をし、夜の明かりも石炭を燃やして確保している。政府は2030年までに電力の4割をクリーンエネルギーで賄うという目標を掲げているが、石炭のない未来はまだまだ先のことと言えそうだ。(BBC)

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Text by 山川 真智子