欧州の天然ガス不足が深刻に 電気料金高騰、冬控え懸念高まる

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 気候変動に対応するため、低炭素で地球に優しいとされる天然ガスの需要が世界で増えている。しかし今年はその価格が大きく上昇しており、アジアでは液化天然ガス(LNG)の争奪戦も起きているほどだ。欧州ではとくに暖房で需要が増える冬を前に供給の不足が懸念されており、ガスや電気代の上昇という消費者への影響も深刻さを増している。

◆去年は安かったのに……ガス価格高騰
 ガス不足の原因は複数ある。まず挙げられるのが、ガスの生産量自体が減ったことだ。ロイターによれば、パンデミックによる景気後退とエネルギー価格の低迷、さらにその前の米中貿易摩擦により、2019年から2020年にエネルギー部門全体の投資が落ち込んだ。しかしその後世界経済は異例の速さで回復し、その結果深刻なエネルギー不足が周期的に発生。在庫は平均以下となり、石炭、石油、ガスの価格高騰が見られるようになった。

 米公共ラジオ網NPRは、昨年は原油やガスが信じられないほど安くなっていたと述べる。価格があまりにも低かったため、企業は採算的に無理な採掘を行わず、これが生産減少につながったと解説している。

 そのほかにも、欧州の冷たい春、アジアの暑い夏でエネルギー需要が高まったことや、戦略的とも思われるロシアのガス供給の減少も影響したと見られている。また自然に左右される風力、水力発電などの出力の低下、排出量取引における炭素価格の高騰も、欧州の天然ガスの需要増につながった(エコノミスト誌)。

Text by 山川 真智子