中国の電力危機、なぜ起きているのか? 世界に影響 来春まで続く可能性

停電中にスマートフォンの明かりで朝食をとる男性(遼寧省瀋陽市、9月29日)|Olivia Zhang / AP Photo

◆工場の操業制限 エネルギー集約産業に打撃
 停電によって最も大きな影響を受けているのは、東北部の一般家庭および工業地帯だ。BBCは中国の国内報道を引き、東北部の黒龍江省、吉林省、遼寧省が停電に見舞われていると報じている。ほかにも南部・広東省などが影響下にある。企業はピーク時間帯の操業を一時中断するか、あるいは稼働日数を制限するなどの措置を迫られている。

 産業分野別では、製鉄・アルミ・セメントなどエネルギーを大量に消費する分野が大きな影響を受けている。SCMP紙によると、大豆加工や繊維産業でも生産に落ち込みが目立ちはじめた。欧州金融機関のBNPパリバは最悪のシナリオとして、9月から12月期のGDPが年率換算で2ポイントの落ち込みをみせると予測している。下流産業の利益率の圧迫や、インフレリスクの増大も懸念される。

◆解消は来春以降か
 国家発展改革委員会はこの電力危機を最重要課題と捉え、解消に躍起だ。SCMP紙によると、電力各社が加盟する中国電力委員会は具体的な解決策として、調達ルートの拡大を目指している。しかし、隣接するロシアはヨーロッパ向けの輸出に力を入れており、一方でモンゴル産石炭は輸送能力に課題があるなど、輸入量の確保は容易ではない。

 英フィナンシャル・タイムズ紙などの報道によると中国政府は、すでにオーストラリア産石炭の荷揚げを暗黙のうちに再開している。しかしアナリストたちは、こうした取り組みがあってなお、少なくとも来春まで電力不足が続くものと予測する。中国製部品に依存する世界の産業にとっても、影響は深刻だ。BBCは「冬が近づくにつれ、問題はとくに中国東北部の工業地帯で深刻になっており、そのほかの世界の地域にも影響を及ぼす可能性がある」と論じる。

 日本国内のSNSでも、交換部品の不足により、住宅機器の修繕を行えないケースが報告されている。対岸の火事とはいかないのかもしれない。

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Text by 青葉やまと