中国の南北問題 経済好調でも格差拡大

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◆パンデミックでも南部成長、ハイテクが救世主
 過去10年の間に、中国の南北格差は拡大してきた。南部は輸出やインターネットブームの恩恵を受ける一方で、資源の豊富な北部は固定投資の鈍化、コモディティ価格の下落、人口移動などに足を引っ張られている(ブルームバーグ)。

 格差をさらに広げたのがコロナだ。ロイターによれば、感染拡大で国内受注の激減、輸送制限、労働力供給のひっ迫が起こり、北部の資源に依存した重厚な製造業地域は大きな打撃を受けた。また主要な成長エンジンである不動産セクターも勢いを失った。一方、南部では民間企業に支えられたハイテクブームが続いていたことで、ソーシャルディスタンシング時代においても経済がさらに発展。また海外の旺盛な需要のおかげで輸出が好調だったことで、急激に状況が好転した。

 野村ホールディングスの試算では、北部の国家経済に占める割合は、2012年の42.9%から昨年は35.2%に縮小している。成長の鈍化する北部では、財政圧力と債務の増加が問題となっている。野村の報告書では、2020年の国内の債券デフォルトの60%以上が北部からのもので、その水準は2019年から大きく上昇している。また、北部では中央政府からの移転支出への依存度が南部よりも高いことも示唆されている。さらに、北部の年間人口増加率は0.3%で南部の0.8%を大きく下回っており、今後数年間格差が続く可能性を示唆している(同上)。

◆格差是正なるか? 北部に重い課題
 中国は、「地域の協調的発展」を目指し地域格差を是正する方針を示しているが、個人投資家や銀行、労働力となる人材は、南部の珠江デルタや長江デルタに集中しているとSCMPは指摘。これが中国の南北格差を拡大させ、すでに複雑化している東部の沿岸地方と西部の内陸地方の不均衡にも拍車をかけているとしている。

 中国北部の経済的衰退は、この地域を通過する「一帯一路」構想から、将来の成長のために国内市場を発展させることを目的とした「双循環」計画まで、国家戦略に広範囲な影響を与える可能性があるとアナリストたちは話している(SCMP)。

 北部の多くの省は最近、生物医学や人工知能などの新興産業を促進する壮大な計画を発表した。しかしロイターは、北京以外ではハイテク関連のエコシステムが弱く、企業が進出に興味を示すかどうかは不明だと指摘する。さらに財政難を抱える企業や信用リスクの上昇も北部の弱点となり、他地域への頭脳流出がイノベーションを妨げ、成長の原動力となる地元の消費をも妨げるとしている。

 2021年は共産党結党100周年ということもあり、北部の地方政府は遅れているという評判を払拭することを求められているとロイターは述べる。しかし期待に応えるためには、かなり高いハードルが待ち受けているといえそうだ。

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Text by 山川 真智子