欧州のタックスヘイヴン、ルクセンブルクの秘密に迫る「OpenLux」

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◆新型コロナウイルスが露呈した問題
 だが、法的に問題がなくとも、モラル的にどうなのかという疑問が残る。たとえばフランスを例にとると、OpenLuxは、「1万5000人近いフランス人がルクセンブルクに法人を有し、その総資産が少なくとも1000億ユーロ、つまりフランスのGDPの4%に相当する」ことを明らかにした(ル・モンド紙、2/9)。そのうちルクセンブルク在住者は27%に過ぎず、56%はフランス居住者だ。

 一方、新型コロナが引き起こした経済危機にあたり、フランスは「部分的失業制度の特別措置」などを設け、企業の救済策を取った。これは、「実質的には企業の負担なしで、70%の賃金相当額の手当が、部分的失業制度を利用して従業員を休ませた企業に支払われる」というものだ。(労働政策研究・研修機構、2020年4月)

 サンタマンOECD租税局長は、部分的失業制度などにより、公的資金、つまり税金によって救済を受けた企業が、「その利益をタックスヘイブンにつぎ込むことは受け入れがたい」と考える。そのため、OECDではグローバル最低税の設定を検討中だという。(フランス・キュルチュール)

◆メディアの限界?
 OpenLuxは、メディアの内包する問題も明らかにした。OpenLuxは、複数の国のメディア17社が1年がかりで調査した大がかりな内容で、ル・モンド紙などは5日にわたって特集を組んだほどだ。それにもかかわらず「TF1テレビ局、BFMテレビ局、ル・パリジアン紙、ル・フィガロ紙、ル・ポワン誌などのメディアは、この件を目立たぬようにしか扱っていない」と、独立団体アタックは批判する。同団体が指摘するように、その理由は、これらのメディアの所有者の名がOpenLuxのリストに載っているからだろう。逆に、株主の名がリストに上がっているにもかかわらずOpenLuxを白日の下に晒したル・モンド紙の決断を同団体は評価している。

 OpenLuxは、タックスヘイブンとして利用されるルクセンブルクの現状のみならず、法や制度の絶え間ない見直しの必要性、メディアが公正を保つ難しさまで詳らかにした感がある。今後の展開に目を配りたい。

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Text by 冠ゆき