欧米経済で「日本化」進行中か 欧州は17年遅れで日本と同じ道?

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◆原因は人口動態? 世界は同じ道を歩む
 日本のアナリストの多くは、一国の経済成果と急速な高齢化には強い関連性があるとしている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、それを考慮すれば、1990年代に日本で起こったことが、いまアメリカや欧州で起きていると考えることもできると見ている。

 2008年から2013年まで日銀副総裁を務め、デフレとの闘いの最前線にいた西村清彦氏は、「日本化」は実は日本自体とはまったく関係がないと述べ、低インフレ低金利は人口動態に起因しており、どこでも起こり得るとしている。日本の場合は、長らく出生率が回復するというシナリオを描き続けため、多くの企業が人口増を期待して過剰投資を続けた結果、過剰生産とデフレにつながったと述べている。そもそも「日本化」は構造的なもので、大量の人々が退職後の長い生活に直面する人類史上初めての時代において、日本が先陣を切っただけだと説明している(FT)。

 FTは、労働人口が減れば成長が鈍化し、経済が縮小するという考えは広く受け入れられているが、それが超低インフレと超低金利を必ずもたらすかについては、意見が分かれるとしている。小泉内閣で経済財政政策を担当した竹中平蔵氏は、人口動態は根本原因ではないとする。世界では約24ヶ国が人口減を経験しているが、デフレで苦しんでいるのは日本だけだとし、構造的経済改革ができなかったことが日本の真の問題だと主張している。

 これに対し西村氏は、問題は人口減少ではなく高齢化だと述べる。たまたま生産年齢にある人口の割合のピークが日米ともに経済危機に重なっただけで、次の20年には韓国、中国も含め、先進国の劇的な高齢化が転換点になるとしている。(FT)。

                                                                                                                 

 スイスのプライベート・バンク、ロンバー・オディエ信託のStephane Monier氏も、日本の「日本化」の究極のけん引役は高齢化だと述べる。生産的な働き手の減少が名目成長率を下げることに加え、高齢化によって退職後に備えた貯蓄が増える。国債の利回りが下がり続けるのは、高齢者の貯蓄と現金化の需要が家族形成途中の働く世代を圧倒した結果起きたように見え、多くの工業化したアジア諸国も同じ道を辿るだろうとしている。

◆金融財政政策も効果なし?「日本化」の厳しい未来
 INGの報告書は、欧州の「日本化」は悪いことばかりではないと述べる。日本は景気低迷でもたくさんの分野でよくやっているし、OECDの調査では、教育、寿命、職場の安全はトップクラス、雇用、収入、治安も総じてよいと述べ、インフレと成長だけが経済的幸福を測る指標ではないと現状をポジティブに見ようとしている。

 一方西村氏は、今後日本化する国はさらに厳しくなると見ている。アメリカの高齢化は日本より穏やかに進んでいるが、個人の貯蓄は日本より少ない。また日本の1990年代から2000年代は他国が成長しており、投資による高いリターンがバッファーとなり資本の輸出を可能にしたが、今日のアメリカや欧州ではそれは難しいだろうとしている。

 FTは、積極的な金融財政政策で「日本化」と戦えると多くのエコノミストはいまだに信じているが、もしも西村氏らの考えが正しければ、そして根本原因が人口動態にあるなら、世界の「日本化」はいま始まったばかりだとしている。

Text by 山川 真智子