アメリカで高速鉄道が普及しない理由 計画しては変更・撤回の50年

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 世界初の高速鉄道として、日本の新幹線が開業して以来、アジアや欧州では高速鉄道の建設が進み、利用者もどんどん増えている。ところがアメリカでは、建設計画が出ても変更や撤回が相次ぎ、普及がいっこうに進まない。他分野では先端技術を誇るアメリカで高速鉄道建設が苦戦するのには複雑な事情があるようだ。

◆利権を守れ 高速鉄道普及で困る勢力
 かつてアメリカは鉄道大国であったが、1940年代にはバス、飛行機、自動車の人気が上昇し、1960年代には多くの鉄道路線が廃線となった。旅客列車存続のため、1971年にバラバラに経営されていた路線をまとめ、全米鉄道旅客公社(アムトラック)が誕生したが、現在までずっと赤字が続いている。

 一般的にアメリカで鉄道が不人気なのは、アメリカ人が車好きだからだと思われているが、工学情報サイト『Engineering.com』は裏の事情を説明する。アメリカではタイヤ、ガソリン、自動車製造関連の企業が、エネルギー効率のよい交通機関の普及を阻んできた歴史があると述べる。彼らがロビー活動を展開して車社会の利点をアピールしてきたとし、アメリカ人の車好きが続いたのは車がなくなっては困る勢力の努力の結果だと見ている。

 とくに高速鉄道に関しては、石油やエネルギー関連のビジネスを経営する、大富豪コーク兄弟の力が大きいと同サイトは述べる。彼らは保守系の利権団体を通じて各地の公共交通機関建設阻止に動いているという。利便性や効率性が評価され、アジアや欧州で続々と高速鉄道が建設されているなか、アメリカだけが利権がらみで後れを取ってしまったということだ。

Text by 山川 真智子