アメリカで高速鉄道が普及しない理由 計画しては変更・撤回の50年

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◆政府の関与薄が影響 行き詰まる建設
 アメリカでは1965年に高速陸上交通法が制定され、高速鉄道建設の方針が示された。1969年に時速90マイル(約145キロ)でワシントンとニューヨークを結ぶ高速列車メトロライナーが運行を開始したが、経済、ビジネスのサイト『Marketplace』によればトラブル続きだったという。その後は同法による資金も枯渇してしまい、以来アメリカでは、いくつもの高速鉄道計画が浮上しては立ち消えている。

 そのようななか、カリフォルニア州では、ロサンゼルスとサンフランシスコを結ぶ高速鉄道の工事が行われている。しかし今年3月になって、現在建設中の区間のみに計画を縮小すると知事が発表した。工費がどんどん膨らんでおり、連邦政府の資金と州の公債で賄うには、コスト面で継続できないと判断したようだ。

 以前、路線が競合する航空会社に高速鉄道計画を断念させられたテキサス州では、ダラスとヒューストンを結ぶ高速鉄道計画が現在進行中だ。こちらは今回プライベート・ファンドで資金調達をしている。これなら心配はいらないかと思われたが、土地の収用をめぐり裁判になっており、行き詰まりを見せている。

 カリフォルニア高速鉄道協会の元CEOジェフ・モラレス氏は、旅客鉄道に関しての連邦政府の援助は、実のところないと断じる。毎年赤字続きのアムトラックの場合でも十分ではなく、連邦政府の政策は高速道路や空路寄りで、鉄道は嫌われ者扱いだとしている。

 そもそも他国では、高速鉄道計画には政府のバックアップがある場合が多い。建設に必要な資金は公共部門が調達し、土地の取得も政府が関与するため迅速に行われるとモラレス氏は指摘。全米高速鉄道協会の会長、アンディ・クンツ氏は、アメリカの場合、許可を得てから工事に入る準備に3、4年かかってしまうが、これが国主導なら1年で終わると述べ、連邦政府の協力なしでは高速鉄道の建設にはハードルが多すぎると主張している。

Text by 山川 真智子