日米物品貿易協定、スタートから温度差 中間選挙控えたトランプ氏は強気に?

Evan Vucci / AP Photo

◆「TPP脱退で失った利益を取り戻す」
 自動車について、ブルームバーグのコラムニスト、デビッド・フィックリング氏とアンジャニ・トリヴェディ氏は共著のコラムで、「トヨタやホンダにとっては、交渉の行方によってアメリカでの地位が左右されることはないだろう」としている。一方、関税に守られた大型車で命脈を繋いでいるアメリカ「ビッグスリー」は、大きな影響を受けそうだ。

 日本は1978年にアメリカ車への関税を撤廃しており、特に障壁はないというのがこれまでの日本の立場だ。一方、トランプ大統領はたびたび、日本は輸入車に厳しい品質基準を課すなどして事実上国内市場を保護していると非難している。トランプ政権の狙いは、昨年の年間ベースで輸出22億ドル・輸入550億ドルという自動車の貿易不均衡を解消して世界の自動車市場を再構築し、国内の自動車生産と関連雇用を拡大することだと、ワシントン・ポスト紙(WP)は指摘する。

 農産物については、フィックリング、トリヴェディ両氏は「依然として力のある国内農業ロビーを抱える安倍首相が、農産物の関税の引き下げに積極的に応じるとは考えにくい」として、日本側のできる譲歩は、TPPで定められた関税引き下げの猶予期間を短縮する程度だと見ている。一方のトランプ大統領も、中間選挙を控え、農業が盛んな中西部の票を切り捨ててまで日本側に譲歩するとは考えにくい。WPは、TPPに代わる「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」参加国と同等の関税レベルに落ち着く公算が高いとし、「TPPを去ったことによって失った利益を取り戻すのがアメリカの目標だ」と書く。

◆カナダとの交渉では強気のトランプ政権
 交渉開始で合意した米ニューヨークで行われた安倍首相とトランプ大統領の会談は、和やかなムードで進んだと伝えられている。しかし、本交渉に入れば、トランプ政権は強い態度に出てくる可能性が高い。それは、北米自由貿易協定(NAFTA)交渉で今、トランプ大統領がカナダのトルドー首相に示している強気の姿勢からも伺える。

 アメリカ、カナダ、メキシコの3ヶ国によるNAFTAの交渉では、アメリカとメキシコは合意に達しているが、カナダは自動車の関税引き上げなどに抵抗を続けている。アメリカは、メキシコの政権が交代する11月末に間に合わないことを理由に、カナダに今月いっぱいまでの調印を迫っている。ロイターなどの報道によれば、トルドー首相がトランプ大統領に、トランプ・安倍会談があった同じ26日に一対一の会談を申し入れたところ、拒否されたという。トランプ大統領はその理由を記者団に問われると、カナダ側が日用品に課そうとしている関税が高すぎると指摘したうえで、「我々はカナダから入ってくる自動車に関税をかけることのみを考えている」と、これ以上の交渉の余地はないという考えを示した。

 トランプ大統領は、カナダ側の交渉担者のフリーランド外相を指して「カナダの交渉スタイルに非常に不満足だ。その代表者もあまり好きになれないね」とも語っている(ロイター)。これまでのところ概ね良好な関係を保っている安倍首相や、米側のライトハイザー通商代表と対峙する茂木経済再生担当大臣に対しても、交渉の行方によってはトランプ大統領がヘソを曲げることも十分に考えられそうだ。

Text by 内村 浩介

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