「日本を超えた」韓国の最低賃金 急激な引き上げに上がる懸念の声

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◆韓国経済界は急激な中小企業の存廃危機を懸念
 日本が空前の人手不足に見舞われている一方で、韓国は史上最悪の雇用状況となっている。韓国では現在若者の4人に1人が失業状態となっており、急激な賃金上昇もその理由の一端と見られている。

 実際、韓国統計庁によれば最低賃金が7530ウォン(約744円)になった今年1月、販売従事者など熟練した技術を要しない未熟練労働者の働き口は前年同月比10万人以上減少した。IMFは未熟練労働者の働き口の減少は今後も続く可能性が大きいと見ており、「韓国政府は最低賃金の追加引き上げに慎重を期さなければならない。韓国の国家競争力を弱体化につながる恐れがある」と警告した。

 韓国経済界も反発している。使用者を代表する者で構成される使用者委員は、急激な引き上げによる人件費の高騰で、中小・零細企業は存廃の岐路に立たせられると危惧する。また韓国経営者総協会(経総)は「経済界は厳しい経済条件と雇用不振が続くにもかかわらず、来年度の最低賃金が8350ウォンに決定されたことに深刻な懸念を禁じ得ない」と述べた(毎日経済新聞)。

 日本のほとんどの地域を上回ることになる韓国の急激な引き上げは、収入増加など肯定的な効果が期待される一方で、副作用を心配する声が非常に多い。雇用人口の25.5%を占める自営業者など低所得層の大量失業も懸念されている。

Text by 古久澤直樹