欧州で再注目の『万引き家族』 スイスで議論になった日本と世界の社会問題

シネパッションが毎月開催されるチューリッヒ中心地の映画館ピカディリー

◆日本もスイスも下降線
 実は、欧州諸国から裕福だと思われているスイスも、経済的な陰りを見せている。5月2日付のワトソン誌によると「スイス人の20人に1人は必要な物も買えない」状態だという。スイスの2大銀行の1つ、クレディ·スイスが倒産したのも記憶に新しい。

 そこには物価高が大きな要因となっている。経済雑誌エコノミストのランキングによれば、世界で一番物価が高い街は、シンガポールと並んでチューリッヒであった。第3位のジュネーブも、この小国が抱えているのだから無理もないかもしれない。

 どこも、弱者を切り捨てない政策を実現させ、心の豊かさを尊ぶ世界になって欲しい。それには、少し立ち止まって、考える時間が必要なのではないか。その機会を年末年始休暇に求めたのが、今『万引き家族』が語られる理由なのかもしれない。

cineworx

在外ジャーナリスト協会会員 中東生取材
※本記事は在外ジャーナリスト協会の協力により作成しています。

Text by 中 東生