日本の70〜80年代「シティ・ポップ」が海外でブーム なぜ火がついたのか?

Summer_candy / Shutterstock.com

◆代表格は竹内まりや ダンスにもチルにも
 海外でとくに人気があるのは竹内まりやによる84年の『プラスティック・ラヴ』などで、YouTubeでは数千万回再生されている。80年代のヒット曲がいまなお海外で受け入れられている秘密は、アップテンポのなかにも感じられる安らぎにあるようだ。インドネシア出身で東京の広告制作企業に勤める27歳女性はAFPに対し、「踊るときもリラックスの時間にも聴いています」と語る。シティポップは「まるでディスコのよう」だという彼女は、「ノスタルジックな音楽だけれどモダンでもある」点が気に入っているという。

 また、洋楽を参考にしつつも日本なりのアレンジを加えたことも海外の音楽ファンにフレッシュな印象をもたらしているようだ。ガーディアン紙は、やまがたすみこのバラードがミニー・リパートンの系譜を汲んでいるとしながらも、トップラインのシンセが独自性を奏でていると評価する。

◆ディグと動画のおすすめで拡散
 人気再燃の背景として、米ヴァージ誌は2つの理由を挙げている。1点目は、日本国内のディガーたちによる再評価だ。いまから数十年ほど前、70年代から80年代のシティポップを発掘するムーブメントが高まった。その波がようやくアメリカなど海外にも伝わったという。2点目は、配信プラットフォームの気まぐれなアルゴリズムだ。YouTubeやSNSなどのアルゴリズムは、音楽カルチャーのバックグラウンドまでを理解できない。そのため、たとえば2010年代のローファイを聴いていたリスナーたちに、竹内まりやを突然おすすめすることがある。こうした偶然からシティポップに興味を抱くパターンが出ているようだ。

 カナダでは、シンガーソングライター兼プロデューサーのザ・ウィークエンドもシティポップの波に乗ったようだ。AFPは、1月7日リリースのニューアルバム『Dawn FM』のなかで、亜蘭知子による1983年の『Midnight Pretenders』がサンプリングされていると報じている。このように日本での流行の「数十年後になって人気が爆発」していると記事は述べ、ノスタルジックかつ新鮮味のあるシティポップのブームを取り上げている。80年代の陽気なシティポップは、厳しい現代に生きる人々の癒しとなっているのかもしれない。

【関連記事】
マーティ・フリードマン「だから日本はクール」 米メディアに語る日米の音楽観の違い
BABYMETAL凱旋、ガンズ日本公演をサポート 海外大物アーティストをも次々と魅了
楽しかった子供時代が蘇る? VHSテープを買い集める人々

Text by 青葉やまと