人気衰えないタトゥー 「イグノラント・スタイル」が流行

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◆欧米のタトゥー人口は10~20%台
 EUでは6千万人以上(EU全人口の12%)がタトゥーを入れている。タトゥーがある人の割合が60%のルクセンブルク、50%のハンガリーなど、かなりタトゥーが普及している国もあるが、多くは10%前後だ。アメリカのタトゥー人口の割合は21%、カナダでは24%、ニュージーランドでは20%とヨーロッパ全体より高く、オーストラリアは14.5%とヨーロッパ並みだ(EUのタトゥーとパーマネントメイクアップに関する報告書)。統計によってはこれらより高い割合が出ている)。日本ではタトゥーに対して否定的な意見が多いため、タトゥーがある人の割合は数%だろうか。

 英調査会社YouGovの調査によると、初めてタトゥーを入れた平均年齢は、イギリスとアメリカでは21歳だという。

 タトゥーは、ジェネレーションXといわれる40歳~50代半ばの世代の若めの層と、ミレニアル世代(ジェネレーションY)といわれる25歳前後~30代の世代に広がっている。その次のジェネレーションZ、つまり10代~20代前半にもタトゥー人気が引き継がれるかはわからない。前の世代がしてきたことに反抗する形で人気が落ちることも考えられるという(先進国におけるタトゥーの流行状況)。

 タトゥーを入れる理由はさまざまだ。「お洒落=自分の体をより美しく見せたい気持ち」「個性的=ほかの人と自分を差異化したい気持ち」「信念や親愛を刻みたい=個人的な考えや感情を可視化したい気持ち」などが思い浮かぶ。ある集団や文化の一員だという帰属意識を示すために入れたり、傷などを隠すために入れたりする場合もあるだろう。筆者の周りでは、お洒落として入れたり、親愛表現として母と娘が腕に互いの名前を入れたり姉妹が足首に互いの好きな絵を入れたりするケースがあった。

 また、タトゥーをたくさん入れる人は中毒に陥っているともいわれる。施術の際には緊張・興奮系ホルモンのアドレナリンが放出され、いわゆる気合が入った状態になる。痛みに伴い、鎮痛作用があり陶酔感を引き起こすエンドルフィンも放出される。タトゥーを入れたことにより自尊心が高まり、創造性を表現できる喜びも味わえる。それらの感覚を追い求めるとしたらタトゥー依存症のようにも思えるが、長年メンタルヘルスの分野、とりわけ依存症の治療に取り組んできたティモシ―・レッグ博士は、タトゥーは依存的ではないと指摘している。その科学的な証拠はなく、依存というのは深刻な精神状態であって、危険や迷惑を顧みずに特定の物や活動を渇望するからだ。

Text by 岩澤 里美