世界にも衝撃与えた仮想通貨流出 「クリプトジャッキング」など新たな脅威

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 日本の仮想通貨取引所コインチェックから580億円に相当する仮想通貨NEMが流出した事件は、世界各国で衝撃をもって報じられた。そして、この事件の仮想通貨市場に与える影響を分析している。その分析から見えてくるのは、仮想通貨市場の安定に向けた世界的な結束と新たなサイバー攻撃の予感である。

◆NEM流出事件の犯人とは
 NEM流出事件が起きて明らかになったのは、日本有数の仮想通貨取引所であるコインチェックの運営体制が実は推奨セキュリティも実装していない杜撰なものであったことだ。だがしかし、こうしたセキュリティの穴を誰が突いたのかは、まだ明らかになっていない。

 事件の犯人像について、CNBCは調査会社データ・トレック・リサーチを経営するニコラス・コーラス氏の分析を紹介している。同氏は、犯人は単独犯ではなくグループだと推測する。というのも、巨額の仮想通貨を洗浄し現金化する過程で仮想通貨を細分化する必要があるのだが、この一連の処理はとても一人で実行できるものではないからだ。同氏は「今回のような仮想通貨を狙ったハッキングは初めてでもなければ、これで終わりというわけでもありません」と述べ、ハッキングが今後も続くと警告している(CNBC)。

◆仮想通貨市場の世界的な防壁づくり
 昨年から激しい乱高下を繰り返している仮想通貨市場の危険性に関して、世界各国が気づいていなかったわけではない。ブルームバーグによれば、今年1月にはアメリカ合衆国財務省は仮想通貨市場の脅威は増大しているという認識を示し、仮想通貨取引業者に対して非合法的な金融活動をしていないかどうか調査すると表明していた。また、1月25日にはイギリスのメイ首相が仮想通貨市場への規制強化を検討することを約束した。韓国に至っては、仮想通貨取引を禁止するべきか否かという議論があったほどだ。

 世界各国で仮想通貨取引の規制が検討されるなかで起きたNEM流出事件は、規制を強化する格好の口実となると見られている。仮想通貨市場への規制の機運が高まるなか、財務省は3月にアルゼンチンで開催されるG-20で世界的な仮想通貨規制が議題となるという見解を示している。

◆もはや誰も安全とは言えない
 仮想通貨市場に関する世界的な規制が整備されると、世界は再び安定と安全を取り戻すのだろうか。この疑問に対して、英デイリー・エクスプレス紙は否を突き付ける。同紙が取材したセキュリティー会社ウェブルートのシニア・アナリストであるテイラー・モフィット氏によれば、仮想通貨市場に「クリプトジャッキング」という新しい脅威が迫っているというのだ。

 クリプトジャッキングとは、仮想通貨を採掘するようコーディングされたジャバスクリプトが埋め込まれたサイトにアクセスすると、アクセスしたユーザのコンピュータの計算資源を使って仮想通貨の採掘を実行するという手口のことである。この手口では、採掘するジャバスクリプトが潜んでいるサイトにアクセスしたすべてのユーザが攻撃の標的となる。攻撃された場合、ユーザは気づかずにハッカーの採掘に加担し、ハッカーは仮想通貨を獲得することになる。

 クリプトジャッキングに対しては、仮想通貨の取引規制や取引所のセキュリティ対策の効果は限定的である。というのも、攻撃の標的が仮想通貨取引とは関係のないユーザにも及んでいるからだ。テイラー氏は、この新たな脅威が急速に世界に広がっていることを強調している。仮想通貨市場をめぐるハッカーとの戦いは、ほかのサイバー攻撃対策と同様にいたちごっこの様相を呈している。

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Text by 吉本 幸記