ビットコインの「世界のハブ」になる日本 取引シェア世界の6割、進む法整備
金融庁は9月末、ビットコインなどの仮想通貨を扱う11の取引所を登録した。国として法定通貨以外の存在を認めた形となり、世界的な注目を集めている。日本での取引量ではすでに世界市場の約6割に達していることから、仮想通貨取引の世界的なハブになったとの見方も出ているようだ。
◆中国で廃れる取引 好機を捉えた日本
仮想通貨をめぐる法整備が日本で進みつつあることについて、フィナンシャル・タイムズ紙(10月18日)では世界的な好例と見ているようだ。仮想通貨の規制を進める世界各国を尻目に、日本は改正資金決済法を今年発効させるなど、前向きな法整備が進む。取引所の運営には営業許可が必要という条件は付いたものの、ついに公的に認可される形となった。同紙では「企業が規制を歓迎することは少ない」「しかし、金融庁の定めた枠組みは恩恵となっている」と評価する。
こうした動きは、マイニング大国として知られる中国と対照的だ。専門誌『ビットコイン・ニュース』によると、同国ではICO(仮想通貨の新規公開による資金調達)が厳罰化されるなど規制が相次ぐ。結果、ある日本の取引所へは、中国やその他世界中のスタートアップから数百件ものICOの希望が押し寄せているという。規制が進む中国から、仮想通貨にオープンな姿勢を示す日本市場へと、経済の軸足は移りつつあるようだ。
◆全世界の取引量の6割
『ビットコイン・ニュース』の別の記事(11月5日)は、世界のビットコイン取引量に占める日本市場の割合が、すでに59.77%に達していると指摘する。アメリカ市場の2倍以上に匹敵する規模だが、中国での禁止以降に大きく躍進したとのことだ。また、日本に加え、韓国も若干の割合を扱っている。
同記事は、レートの安定化にも日本が貢献すると読む。従来は中国主導で乱高下が続いたが、環境の整う日韓が市場をリードすることで、価格が安定するとの論旨だ。「日本は、そして韓国もある程度の割合で、今や世界の仮想通貨経済のハブを代表している」と日本の役割に太鼓判を押す。
経済・金融誌の『シーキング・アルファ』(10月31日)では、寄稿者のチャールズ・スミス氏が、金融庁の方策を手放しで賞賛している。各国政府が次々と仮想通貨を禁止するとの観測が業界内にあったが、日本はこの見方にノーを突きつけたと捉えている。氏は「暗号通貨の懐疑派たちよ、残念でしたね。日本はたった今、『ビットコインは禁止される』という風説を葬り去ったのです」と興奮気味だ。日本は、経済規模、海外資産、技術などあらゆる面で世界経済の要であり、仮想通貨の規制と監視に十分な資質を備えていると見ているようだ。
◆フィンテックの促進へ
日本の仮想通貨市場の成長は、まさに政府の戦略通りなのかもしれない。フィナンシャル・タイムズ紙では、日本政府が仮想通貨に柔軟な姿勢を示すのは、フィンテック(金融分野でのIT活用)の枠組み整備と、それよる経済の刺激を期待しているのではと分析する。これまで日本は製造業では「カイゼン」活動などで名を馳せてきたが、フィンテックの市場規模では先進諸国に遅れを取っていたという。仮想通貨の促進でキャッシュレスの支払いなどを加速したい思惑が政府にはあるようだ。
実際に、新たなサービスも芽生えつつある。専門誌『コインデスク』によると、SBIホールディングスがマイニングへの興味を示しているようだ。また、ビットコイン・ニュースでは、国内大手のGMOがマイニング用のボードを販売する計画を伝える。さらに、日本で取引所『Zaif』を運営する企業は、売り上げの管理や多言語でのホワイトペーパー作成などをパッケージ化したICOのワンストップ・ソリューションを提供する予定だという。
フィナンシャル・タイムズ紙は、関連したスタートアップ企業の成長にも期待する。ただし日本の若者はスタートアップでの挑戦よりも既存業界の大企業を志望する傾向があるなど、法整備以外のところで難しい面もあるようだ。
かつて製造業で世界に名を馳せた日本だが、仮想通貨とフィンテックの国として次世代に可能性を拓くことはできるだろうか。
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