ビットコインの分裂は、仮想通貨の信用を損ねるものなのか?
8月1日、仮想通貨市場シェア第1位のビットコインから新たな仮想通貨ビットコインキャッシュが分裂した。信用を創出する仕組みがリアル通貨とは異なる仮想通貨の「分裂」という事態については、その意義を理解するのが難しいところがある。こうしたビットコイン分裂騒動に関して、その背景を確認したうえで、その意義を探っていきたい。
◆取引量増大への対策で二派に分かれたビットコイン
インターネット上で取引されるビットコインの分裂騒動は、投機目的の取引が増大したためにネットワークの負荷が増大し、取引速度が低下したことがそもそもの原因である。そこで取引速度を速くする対策として、ブロックと呼ばれる処理単位のサイズを拡張することが検討された。このブロックサイズをめぐって、運営ユーザーのなかで二派に分かれた対立が生じ、ついにはビットコインとビットコインキャッシュに分裂したのだ。
運営をめぐる対立を「分裂」で解決した背景には、ビットコインをはじめとする仮想通貨がそもそも特定の政府が発行しているわけではない「民主的な」貨幣であることも影響している。つまり、ビットコインにはリアル通貨のような貨幣を独占管理する組織が存在しない。それゆえ対立が生じた場合、調停するよりは意見を同じくする党派に分裂する方向に傾きやすい、というわけである。
◆フラグメント化する仮想通貨市場への懸念
ビットコインの分裂に関して、BBCはオックスフォード大学インターネット研究所に所属するヴィリ・レドンヴィルタ教授の見解を紹介している。同氏は、今回の分裂騒動はビットコインとビットコインキャッシュ双方の市場価値の確立を妨げることになるだろうと述べている。というのも、分裂によって仮想通貨ごとの市場規模が小さくなり、通貨としての利便性を損なってしまうからだ。
また豪ABC放送は、この分裂騒動をアメリカ南北戦争を連想させる「civil war」と表現して、ビットコインをはじめとする仮想通貨全体の信用を失墜させかねないものだと報じている。同メディアは、投資会社AMPキャピタルのチーフ・エコノミストのシェーン・オリバー氏が分裂したビットコインを評した次のような発言を引用している。「世界有数の政府であるアメリカ、オーストラリア、そのほか重要な国が消滅もしくは破綻し、それらの国の通貨が紙切れ同然となるようなある種の重大な危機、あるいは世界的な終末戦争でも起こらないかぎり、人々はリアル通貨からビットコインのような仮想通貨に切り替えることはないだろう」
◆「貨幣の民主化」は道半ば
もっともABC放送は、ビットコイン分裂に伴って、仮想通貨市場第2位のシェアをほこるイーサリアムに市場の注目が集まっていることも指摘している。市場は、依然として仮想通貨自体を見放したわけではないのだ。イーサリアムにはJPモルガン・チェース、マイクロソフトといったそうそうたる企業が市場参入を表明している。これほどまでに仮想通貨が注目されるのは、ビジネス全般における時間とコストの削減が期待できるからだ。仮想通貨では、ネットワークを中央集権的に管理する組織が存在せず、マイニングと呼ばれる処理をユーザーが実行することによって、その貨幣の信用を担保している。こうした管理者がいない仮想通貨を使えば、管理コストやサーバーメンテナンスによる処理遅延が発生しないネットワーク・ビジネスを構築できるのだ。
しかし、リアル通貨にはないメリットを生み出す「民主的な」仮想通貨の運用は、まだ黎明期にある。ビットコインの分裂騒動も、民主的に運用される仮想通貨がはらんでいる不安定性のひとつが顕在化したために起こったこととも言える。
ただ未成熟だからといって、仮想通貨自体を否定するのはあまりにも性急だと言わざるを得ないだろう。CNNは、仮想通貨専門家のザキ・マナーン氏の発言を引用して、ビットコイン分裂騒動を総括している。「一連の騒動は、仮想通貨というシステムを将来的にどのように運用すべきかに関して、有益な情報を提供してくれるだろう。仮想通貨はまだ疑いようもなく青写真の段階にあるのだから、むしろビットコインの分裂から学ぼうではないか」
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