動物の細胞を培養した肉、米で販売承認 シンガポールに次いで2ヶ国目

グッド・ミートの培養鶏肉を使った料理(21日)|Jeff Chiu / AP Photo

◆培養肉の可能性
 培養肉を展開するイート・ジャストは2011年にカリフォルニア州で創業されたフードテック会社で、グッド・ミートのほかに、植物由来の「卵」のブランド、ジャスト・エッグ(Just Egg)を市場に展開しており、すでに卵3億個分に相当する量のジャスト・エッグの販売実績がある。人の健康にとってより良く、環境負荷が少ない食品を開発・販売するということが中心事業であり、グッド・ミートはジャスト・エッグに次ぐ新商品だ。

 グッド・ミートは実際の鶏肉の細胞を培養するところから始まる。これらの細胞に、アミノ酸、炭水化物、ミネラル、脂質など栄養素がたくさん含まれた出汁を与えることで、成長を促す。培養肉は、さまざまな管理が徹底されたビールの醸造所のような場所で製造される。その製造工程はおよそ1ヶ月とのことだ。いわゆる植物由来の代替肉ではないため、味に関しては、ほとんど普通の鶏肉と区別がつかないという。

 現在、同社のサイトによると、シンガポールではグッド・ミートの鶏肉がシンガポールドルで4〜23ドル(420〜2400円)という価格で販売されているとのことだが、これは現状のコストを度外視したものだとBBCは報じる。アメリカでは近日、首都ワシントンのフュージョンレストラン、チャイナ・チルカーノで展開される予定。このレストランのメインメニューは20ドル(2800円)前後で、比較的手頃な価格帯の場所だ。一方、培養肉を販売するもう1社、アップサイドはミシュランの星を一つ獲得したハイエンドレストラン、バー・クレンでの展開を予定しており、培養肉は高価格なメニューなどに組み込まれることが予想される。ヴォックスは、こちらの卸値もコストは度外視したものだと報じる。

 培養肉は、この2社以外にも世界の約150の企業が開発を進めているが、スケールするにはまだ時間がかかるとの見込みだ。一方で、環境負荷への配慮という観点から公的支援などを受け、コスト削減が実現できれば、大きく流通が広がる可能性も秘めている。

Text by MAKI NAKATA