商品に鍵をかけるアメリカのスーパー 急増する組織的万引きの深刻さ

鍵つきの医薬品の棚(ニューヨーク、1月31日)|Bebeto Matthews / AP Photo

 全米小売業協会(NRF)は昨年、「失われた在庫」による2021年の小売業界の損失が、推定945億ドル(約12.9兆円)に上ると発表した。損失の主な要因の一つとして上げられているのが組織的万引きだ。新型コロナウイルス感染症の大流行から著しく増加しており、被害防止のため小売店はコスト増を余儀なくされ、消費者も迷惑を被っている。

◆コロナがきっかけに 小売店での万引き急増
 発表された損失は、「シュリンク」(失われた在庫を意味する業界用語)によるものだが、ここには従業員による盗難や商品の破損を含む損失も含まれる。しかし、シュリンクのうち最大部分(37%)は外部からの窃盗によるもので、組織的な万引きで奪われた商品を含んでいる。(ニューヨーク・ポスト紙、以下NYP)

 昨年、小売店での組織的万引き件数は平均で26.5%増加した。NRFによれば、945億ドルという金額は、2021年の小売の売上高の約1.4%に相当する。シュリンクは2019年までは年平均成長率で7%程度だったが、コロナ感染症が大流行した2020年には、47%となっていた。2021年はそれよりさらに4%増加していたという。(ウォール・ストリート・ジャーナル紙

Text by 山川 真智子