商品に鍵をかけるアメリカのスーパー 急増する組織的万引きの深刻さ

鍵つきの医薬品の棚(ニューヨーク、1月31日)|Bebeto Matthews / AP Photo

◆人手不足で警備員も増やせず… 商品を店頭に置かない店も
 万引きの防止には小売業者側で人員を増やして対応する必要があるが、コロナの流行で人手不足が悪化し、十分な対応ができない。小売大手ウォルマートのマクミロン最高経営責任者(CEO)は、同社の盗難被害は歴史的な大きさとなっており、このままでは価格の上昇や店舗の閉鎖につながる可能性もあると指摘した(CNBC)。

 大手小売業者は、商品が大量に盗まれるのを阻止するため、鍵のかかった商品ケースや追加のセキュリティ装備を導入している。しかし、鍵のかかった陳列棚から商品を取り出さなければならないことで、顧客に不便を強いているのが実情だ。ソーシャルメディアでは、人手不足の店舗でますます受け入れがたい接客が行われていると不満の声が上がっているという。(GOBankingRates


ステーキ肉も陳列棚から消え、店員に裏から取って来てもらわなければならなくなったと嘆くツイート


 商品を守るため施錠するシステムを導入することで、店舗の売上高が15~25%減る可能性があり、顧客にとっても企業にとっても理想的ではないと業界関係者は話している(フォーブス誌)。

◆問題点は万引き=ビジネス 法律が流れを変えられるか?
 薬局チェーン、ウォルグリーンのキーホー最高財務責任者(CFO)は、組織的万引きに加担している人たちは、食べ物を買う金もないほど困窮しているのではなく、「実際に店舗に入り、美容製品を洗いざらい持ち去ってしまうギャングだ」とし、これが本当の問題点だとしている(GOBankingRates)。

 盗まれた商品は、eBayやアマゾンなどの二次市場に持ち込まれているという。サプライチェーン問題もあり、以前より高く売ることができるようになったとNRFは説明している。(NYP)

 こうした犯罪を取り締まるため、アメリカではオンライン・マーケットプレイスの取引に透明性と説明責任を求める法律が2023年6月より施行されることになった。盗品の販売場所に監視の目を入れることで、組織的万引きを抑制できるかどうかが注目される。

Text by 山川 真智子