日本企業にとって難しくなる海外事業 中ロが狙う新常態、高まる政治リスク

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◆日本企業にとって難しくなる海外事業
 だが、こういった高い政治リスクがあるなかでの事業継続という決断は、今後さらに増えることだろう。ペロシ米下院議長の台湾訪問によって、中国が台湾を取り囲むかのように軍事演習を実施したが、これは単に台湾を威嚇するだけでなく、台湾を取り囲むかのような軍事演習ということを常態化し、新常態を作り出す目的がある。そして、ロシアも侵攻に加え、ロシア軍のウクライナ駐留を常態化させることで新常態を作り出そうとしており、大国間の覇権争いは今後いっそう激しくなることは避けられそうにない。

 そうなれば、日本企業にとっても、中国やロシア絡みのビジネスはいっそうやりにくくなる。サハリン2の事例でも、たとえ三井物産と三菱商事が国益を考えて引き続き参画するといっても、ロシアをめぐる対立がいっそう深まることになれば、プーチン政権が両社に対してさらなる政治的、経済的な揺さぶりをかけてくることは十分に想像がつく。日本企業にとって海外事業は、大国間競争に回帰する世界ではいっそう厄介なものになるだろう。

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Text by 本田英寿