「また会う日まで」ロシア撤退のマクドナルド、CEOが従業員にメッセージ

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◆地元に売却を希望 将来の復活に含みも
 ロシア事業売却の理由として、同社は「もはや所有し続けることは不可能となり、マクドナルドの価値観とも一致しない」としている。主要マーケットからの撤退は同社にとって初めてとなり、今後はシンボルの「ゴールデンアーチ」や社名入りの看板などの撤去を行うが、ロシアでの商標は維持するという(AP)。

 経済サイト『マーケット・ウォッチ』によれば、マクドナルドはロシアの地元の買い手を探している。自社でロシアのほとんどの店舗を所有しているため、売却という観点では資産の豊富なビジネスだが、売却の状況、ロシアの買い手候補が直面する財務上の課題、マクドナルド側からのブランド名のライセンス供与がないことなどを考えれば、売却価格が侵攻前の事業の簿価に近づくことはないという見方を示すアナリストもいる。

 マクドナルドのクリス・ケンプチンスキーCEOは、同社がロシアに再上陸する可能性も残している。未来の予測は不可能だが、マクドナルドがロシアにもたらした「希望」という精神をもって自身のメッセージを終わりにしたいと従業員への手紙で表明。さよならではなく、また会う日までと言いたいとしている。(AP)

◆他社も追随か 企業も姿勢を示す時代
 ロシアからの撤退に取り組んでいるのは、マクドナルドだけではない。フランスの自動車メーカー、ルノーは、ロシアの自動車会社アフトバズの株式の大半をロシアの科学機関に売却し、モスクワの工場を地元自治体に譲渡すると発表した。

 ミシガン大学のロス経営大学院のマキシム・シッチ教授は、「企業が姿勢を示すことを避けられる時代は終わった」と指摘。人々は正しい行いをする企業と関わりたいと思っているとし、ビジネス、さらには人生には、利潤を最大化するよりも大切なことがあると説明する。同氏はまた、民主化における長年の成果が非道なウクライナ侵攻で帳消しになることはとても残念だとし、マクドナルドの閉店がソ連の鎖国時代への逆戻りを意味すると述べている。(AP)

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Text by 山川 真智子