米が後退、欧州VSロシア鮮明に ウクライナにとって悪夢のトランプ再選

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◆避けられない欧米内の分断
 このシナリオが進めば、アメリカと欧州の関係悪化は避けられない。トランプ氏は「防衛費を相応に負担しないNATO加盟国は守らない」「ロシアに自由にやるようけしかける」と発言しており、アメリカの脱ウクライナは欧州諸国の対米不信をいっそう強めることになるだろう。

 同時に、欧州各国はウクライナとの二国間安全保障面協力などを強化し、欧州対ロシアの構図が鮮明になってくるだろう。海を挟んでウクライナの戦場から遠く離れたアメリカと、ロシアと陸続きの欧州が感じる脅威はまるで異なる。トランプ再選はウクライナ、欧州にとっては厳しいシナリオだろう。

◆日本にとっても対岸の火事ではない
 これは日本にとっても対岸の火事ではない。近年、台湾をめぐって軍事的緊張が高まっているが、台湾有事は日本有事とも言われるように、日本のシーレーンや先島諸島の安全などへの影響は避けられない。

 トランプ氏が今後台湾についてどのような姿勢を示すかはわからないが、ウクライナ同様に台湾への軍事支援の縮小や停止に言及することも否定できない。台湾有事で中国が最も注意しているのはアメリカ軍の関与であり、トランプ氏が関与しないという姿勢を鮮明にすれば、それは中国の軍事侵攻というハードルを大幅に下げてしまうおそれがある。

Text by 和田大樹