米が後退、欧州VSロシア鮮明に ウクライナにとって悪夢のトランプ再選

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 11月の米大統領選に向けた共和党の指名候補争いで最大の山場となるスーパーチューズデーを3月5日に迎えた。全米15州で一斉に投票が行われ、これまで圧勝してきたトランプ氏がバージニア州やテキサス州、マサチューセッツ州、カリフォルニア州など14州で勝利し(バーモント州のみ敗北)、選挙戦を繰り広げてきたヘイリー元国連大使は選挙戦からの撤退を表明した。これで秋の本選は、トランプ氏とバイデン大統領の再戦となる。

◆厳しい立場のウクライナ
 今日の状況は大きくロシア有利に傾いている。ウクライナ軍は昨年夏に大規模な反転攻勢を仕掛けたが、上手く成果をあげられず、欧米諸国では支援疲れが広がっている。ゼレンスキー大統領などウクライナ政府高官は、欧米の支援が滞れば我々はこの戦争に負けると述べている。

 そういった状況に危機感を覚えてか、フランスのマクロン大統領は2月末、西側諸国の地上部隊をウクライナへ派遣する可能性を排除するべきではないと踏み込んだ発言をした。しかし、ドイツのショルツ首相や北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長らは、NATO加盟国の兵士が戦場に派遣されることはないとマクロン発言を否定するなど、欧米の間では動揺が広がっている。

◆トランプ再選はウクライナにとって悪夢か
 今後のポイントになるが、アメリカ大統領選の行方である。トランプ政権が再発足することになれば、ウクライナはさらに厳しい立場に追いやられることになるだろう。トランプ氏は「24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる」「ウクライナへの支援を最優先で停止する」などと述べ、大統領に返り咲けばアメリカの脱ウクライナが進むことだろう。

 トランプ政権の再来によって想定される一つのシナリオは、トランプ氏がウクライナに対して支援停止とともにロシアとの停戦を要求し、ロシアのプーチン大統領には攻撃の停止を呼びかけることが考えられる。そして、ロシアはそれに応じ、トランプ氏にウクライナとの停戦で仲裁役を求め、その結果、ウクライナが仕方なく停戦に応じるという形だ。

 だが、これはウクライナにとっては強制的な停戦にしかならず、ロシア軍に休息期間を与えることにしかならない。プーチン大統領が目指しているのはウクライナの属国化であり、先日の大統領選挙で国民から政治的なお墨付きを得たという自尊心から、時間が経過すれば攻撃を再開させることだろう。

Text by 和田大樹