ウクライナ侵攻は第2、第3の侵攻を誘発するのか 多極化時代に突入した世界

台湾周辺の海域で中国空母(左奥)を監視する台湾の駆逐艦(9月)|Taiwan Ministry of National Defense via AP

◆台湾有事を誘発しないか
 そして、日本との関連で今後最も懸念されるのが台湾有事だ。中国の習近平政権は台湾統一を目指し、台湾独立に向けた動きがあれば武力行使も辞さない構えを貫いている。今日の米中対立でも、台湾問題は最重要イシューになっており、アメリカも台湾への防衛協力を強化する一方で、緊張は高まっている。

 台湾への軍事侵攻にあたり、中国が最も注視しているのは米軍が直接台湾防衛に関与するかどうかだ。そのような意味で、中国がウクライナ侵攻を一つの参考事例にすることが懸念される。アメリカがどのような状況になれば介入しないか、米軍が中国軍の行動を制御できなくなるのはいつ頃かなど、すでに中国軍はあらゆる戦略を練っている。

 台湾では来年1月に次の指導者を選ぶ総統選挙が行われ、また現時点で中国軍に台湾侵攻を円滑に実施できる準備はできていないので、短期的に有事が発生するわけではない。ただ、台湾には2万人の日本人が駐在しており、有事となれば唯一の安全な退避手段である民間航空機はすぐにストップするので、有事を想定した対策は邦人保護の観点から今後進んでいくと思われる。

Text by 本田英寿