アメリカの対中半導体規制は経済安全保障か、保護主義化か?

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 米中の間で半導体覇権競争がエスカレートするなか、バイデン大統領は9日、半導体とスーパーコンピューター、人工知能の先端3分野における中国向けの投資を規制する大統領令に署名した。これは、アメリカの企業や個人からの投資が中国の軍事力向上を助長しないよう規制をかけるものだが、禁止投資先には香港やマカオも含まれ、違反した企業や個人には罰則も科される。アメリカはこれについて安全保障上の理由を挙げ、同盟国や友好国にも協力を呼びかけるという。事実上の圧力のようにも聞こえるが、日本にもすでに要請していることだろう。これらの動きに関し、筆者は最近、アメリカにはかなりの焦りがあり、対中規制は経済安全保障のためか、アメリカのプライドや権益を守るためか(保護主義化)、よくわからなくなっている。

◆投資規制は昨年10月の半導体規制の延長
 今回の投資規制は、昨年10月にバイデン政権が実行に移した先端半導体の対中規制の延長にある。バイデン政権は先端半導体が中国によって軍事転用されるのを防止するために規制したが、それを確固たるものにするため、今年1月には先端半導体の製造装置で高いシェアを有する日本とオランダに協力を呼びかけた。それを受け、日本は7月下旬から先端半導体関連23品目で対中規制を開始し、オランダも今後それに続くが、バイデン政権は先端技術で中国に追い抜かれないよう極めて厳しい姿勢を貫いている。

 そして、ここに来てアメリカの大手半導体企業からは懸念の声が上がっている。半導体企業の幹部たちは7月、ホワイトハウス高官らと会談し、半導体分野の対中規制が過度なものになっており、かえって米半導体業界を衰退させる恐れがあるとして、対中規制の緩和を求めたという。

Text by 本田英寿