多元化・長期化する米中対立

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 米中対立というワードが常態的に使われるようになってから、どれほどの歳月が流れただろうか。少なくとも21世紀に入ってからの世界はテロの時代に突入し、紛争の主戦場はアフガニスタンとイラクだった。その時代の紛争で、中国に焦点が当たることはあまりなかった(専門家の間ではすでにこの時から大国化に伴う懸念は指摘されていた)。だがその後、中国が徐々に頭角を現すにつれ、それをアメリカとの関係に当てはめて議論することが大幅に増えていった。

◆多元化する米中対立
 それから歳月が流れ、すでに米中対立は改善不可能なところまできている。アメリカで極めて親中的な大統領が誕生するか、中国の習国家主席が民主化を押し進めない限り、今後も米中対立が雪解けに向かうことはない。

 今日の米中対立はよく新冷戦と表現されることがある。確かに世界の2大国が対立するという構図は米ソ冷戦時代と同じ構図だが、その中身は大きく異なる。米ソ冷戦は自由主義と共産主義のイデオロギーの対立であり、今日の米中対立も民主主義と権威主義という形で表現できるが、今日の米中対立の最大のポイントの一つが、紛争が展開される領域が多元化しているということだ。

 米中間で軍事衝突は発生していないが、トランプ政権で始まった米中貿易摩擦のように、経済や貿易という領域では輸出入制限や関税引き上げなど双方の間で衝突が続いている。また、昨年10月、バイデン政権は先端半導体技術が軍事転用される恐れを警戒し、対中半導体輸出規制を強化したが、米中間では技術という領域でも対立が先鋭化している。まさに半導体覇権競争はその典型例だ。

Text by 本田英寿