イラン・サウジ外交関係正常化を仲介した中国の意図

サウジアラビアとイランの外交関係者と中国の王毅共産党政治局員(3月11日)|Luo Xiaoguang / Xinhua via AP

 イランとサウジアラビアが10日、外交関係の正常化で合意した。今後、イランとサウジアラビアは2ヶ月以内に相互の大使館業務を再開させるという。イスラム教スンニ派の盟主であるサウジアラビアは長年、アラビア半島で影響力を拡大しようとするシーア派の盟主イランの動きを強く懸念し、両者は中東での覇権をめぐって争ってきた。近年ではイエメン内戦をめぐって両国は代理戦争を展開し、サウジ領内へのミサイル攻撃を続けるシーア派武装勢力フーシ派をイランは支援してきた。両国は2016年、サウジアラビアによるシーア派聖職者の処刑をめぐり緊張が高まり、テヘランにあるサウジ大使館が襲撃されたことを受け、サウジがイランと断交した。

◆国交正常化によって中東はどうなるか
 今回の国交正常化による影響は大きく2つ考えられる。スンニ派の盟主であるサウジアラビアがイランと関係を改善させたことで、今後はこれまでサウジと同じようにイランと距離を置いてきたアラブ諸国も、イランとの関係見直しを進めてくる可能性がある。

 もう1つが、イスラエルの反応だ。近年、イスラエルは経済分野を軸にアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、スーダン、モロッコの4ヶ国と国交を正常化させ、サウジアラビアとの関係強化にも努めた。しかし、イスラエルが長年イランと敵対関係にあるなか、サウジアラビアとイランが外交関係の正常化に合意したことで、今日イスラエルの心境は極めて複雑だ。サウジアラビアとイランの関係改善は、今後のイスラエルとサウジの関係にも影響を与えそうだ。

Text by 本田英寿